前田慶次はただ、団子を頬張る真田幸村をじーと見ていた。幸村はそんな視線に耐えつつも、団子をもぐもぐと食べる。そして数分も持たないうちに、ふるふる震え始めてじとーと睨むかのように慶次を見る幸村。
そんな幸村を見てニコニコと微笑む慶次に、幸村は思わず溜息をついた。
「どした、幸ちゃん。」
「幸ちゃんでは御座らぬ。…前田殿が某をずっと見ているもので、食べる事に集中できませぬ。」
「嗚呼、ごめんね。幸ちゃんがあまりにも、」
あまりにも?と首を傾げてお茶を飲もうとする。そして慶次がニヤッと少々怪しい笑みをして、
「あまりにも可愛いからさー。」
「ぶはっ!」
慶次の言葉に幸村は思わず咽こむ。お茶を飲んでいた最中なので、お茶があちらこちらに毀れている。
「大丈夫、幸ちゃん?」
「だ、い丈夫なわけ…御座らん。」
ゲホゲホと咳をしつつも答える幸村により、いっそう慶次はニヤニヤと笑う。
「やっぱ、そういう初心な所可愛いやー。」
「い、いい加減にしてくだされ慶次殿!某は男ですぞ!」
「うん、知ってるよ。」
幸村は先程よりも数倍慶次を睨んだ。だけど、慶次は相変わらずニヤニヤしていて、幸村は二回目の溜息をついた。