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(intro/main/clap)





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「……とは決意したものの、徹志に避けられてちゃどうしようもないよね」
本当、今日一日、見事に避けられた。
昨夜から家に帰ってきた形跡はなく、大学の講義も欠席、携帯は電源が切れている。
結局、徹志の姿を見ないままこうして夕方になった。
「……はあ」
私はというと、途方に暮れて例の棚の前に座り込んでいる。
(まさか、ここまで徹底的に避けられるとは……)
この一年間、喧嘩なら何度かあった。
それでも、怒りながらも徹志はずっと傍にいたし、私だって落ち込んだりしながら徹志の隣にいた。
(……、でも、後悔なんて、してないんだから)
涙腺が緩み、視線を伏せる。――そして、私はそれに気付いた。
「あれ……なんだろ、コレ」
私は壁と棚の間にある、細い隙間に指を突っ込んだ。
そして、棚の側面をなでる。
限りなく前面に近い位置、小さな凹凸の感触を指の腹がとらえた。
(ゴミかな?……いや、違う、これは)
「……鍵穴、だ」
開かない開かないと思ったら、やはり鍵が必要らしい。
(はぁ……。やっぱり徹志に言うしかないか)
「その棚が気になるのか?」
「……!」
「徹志……」
(……いつの間に)
恐々と振り向く。
そして、その彼の表情、雰囲気に私は拍子抜けしてしまった。
(徹志、なんかいつも通りだ)
「全く、最近様子がおかしいと思ったら、これの中身が気になってたんだろ?」
「歩美も、このくらい普通に言ってくれればいいのに」
笑いながら、ゆっくりとした足取りでこちらに近づいてくる。
「う、ん。ごめん」
(……なんだ。いつもの徹志だ)
「仕方ないから見せてやるよ。歩美にだけだからな?」
「うん」
(私の気にしすぎだったんだ)
安心した私は、近づいてきた彼の袖を小さくつまむ。
「この棚、変わった場所に鍵があるんだね」
「はは、そうだろ?これに気づいた歩美は探偵の素質があるかもな」
「えぇ、それは大げさだよ」
「そうか?……っと、これで開くはず」
徹志が鍵をまわし、引き出しに手を掛ける。
私はその後姿をじっと見守っていた。
(何が入ってるんだろう?)
早く知りたい。この様子だと、私が思ってるほどたいしたものではなさそうだけれど。
(そう。たいしたものじゃないんだよ、きっと)
なのに、さっきから。
どうして。
(体の震え、止まらない……)
「歩美、ほら見てみな」
「う、ん」
徹志が、体を半分ずらし、私を引き出しの前へと立たせる。
私は徹志の腕の中から、そこを覗き込み……。
そして、
「……ッ!!」
衝撃に声を上げる間もなく、意識が暗転した。



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ふと、自分が薄暗い箱庭にいることに気付いた。
これは夢だ。
生暖かい赤が私にそれを教えてくれる。
また夢を見ている。
目の前には赤い。(糸)赤い。(手)赤い。(ミヤ)
「み、や……。うぅ……」
がんがんと、暴れ狂う頭痛に顔をゆがめる。
うずくまる私に、女は問いかけた。
『……××したの?』
「違う……」
『××しちゃったんでしょ?』
「違う……!」
『私にまで隠さなくてもいいんだよ?』
「違う、私じゃない……!!」
『大丈夫、誰にも言わないから、だから』
「…………私じゃないってば!!」


びくり。
大きく跳ねた体に、意識が覚醒したのを知った。
「……あ、あぁ、」


【いろいろと分岐】


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