「好きだよ」
「君が一番伊達男だって」
「可愛い、格好いい」
全部私が久君に伝えた言葉。私は恥ずかしいとか、照れ臭いとかそう言った感情に妨げられて思ってる事を控える、と言った事はあまりしない。思ったら伝える、これが一番だ。だから私は今日も久君に話しかけるし、めちゃくちゃ褒める。彼の前だとお喋りになる様で、口も饒舌になる。下校、学校の帰り道。少しずつ暗くなり始めた夕暮れ時を二人で同じペースで歩きながら駄弁る。
「久君、今日ちょっと寄り道してくかい?」
「?どこ寄りてえんだ」
「ラブホ行ってみたい」
「バカヤロウ」
しかめっ面をしてふい、と顔を逸らす久君を見てついニヤつく。反応が何とも可愛い。元々誰彼構わず下ネタは言ってしまうタイプだったけど彼は特に。慣れてないのは目に取れるが、私のこれを受け入れている数少ない人物なのだ。つまりセクハラを許してくれている。優しい。大好き。
「冗談だよ、まあ、行ってみたいと思ってるのは本当だけど。ほら、お願い事って言葉にしたら叶うって言わない?」
「…」
「まあいつかね、急がずとも叶えられる夢なんで、お楽しみとして取っておこうか。さて、君門限あるんでしょ?ぼちぼち急がないと…」
「好きだ」
「………え?」
「えつのが、好きだ」
「………」
「…おめえみてえに、思った事言ってみただけだ」
「な、なにそれ…」
やめたまえそんな。慣れてないのに。めっちゃ顔赤いじゃん。汗かいてんじゃん。いやほんと見てわかるぐらい動揺してるじゃん。言った本人がパニクんないでよ。パニックになってんのはこっちだよ。
「な、なんだい、ほんと、どうしたんだいそんな…」
うわ口まごつく。簡単な言葉すら出てこなくて下手したら呻き声とか上げそう。やめろ引かれる。鎮まれ喉。
「お前もいつも言ってるだろ!!…好きってんだけだ」
「ヒュッ」
呼吸の仕方忘れて喉から台風みたいな音でた無理。ついでに立ってるのも無理。立ち方忘れた。四足歩行で生きていこう。しゃがみこんで俯く。顔上げらんないわもうこれ。このまま地底で暮らします。
「えつの」
待って。
今呼ばないで。
「帰るぞ。…お前が良いなら、その、お前ん家寄ってって良いか?」
「…………い、いよ…………」
「じゃあほら、立て」
「…」
竦む足を何とか起こして立ち上がった後、ゆっくりと久君を見る。私の顔を見て驚いた顔をした。あチクショ。驚いてる顔可愛い。
「なっなんだあ!?なんでそんな顔してんだてめえ!!」
「いやーーー花粉症でしてね!今の時期辛いね〜ほらそこ木あるし!」
「枯れてんじゃねえか」
「知らんよ、私は花同士のセックスに巻き込まれてる被害者なんだ」
「まぁたそんな事を…」
ちょっとげんなりした顔をして鞄を持った手を肩にかける。なにかに気がついたようで、左手を伸ばして私の鞄をひょいと持ち上げた。
「えっ」
「荷物持ち」
「…あり、がとう」
「おう」
「………なんか」
「あん?」
「何か今日すっごい恥ずかしいんだけど…」
声が小さくなる。今ならこれパソコンのタイピング音に負ける。あー!暑いわー!真夏だわー!今冬真っ盛りだけど。
「………。」
久君も黙り込んだ。口をぎゅっと閉ざして眉を動かして。
「…ねえ」
「…ん?」
「手、繋いでも良い?」
「…うん」
ああ、うん。やっぱ思った事言った方が良いわ。得するもん。嬉しいもん。
あったかい。
「……かわいいな。」
「え」
「…」
「いやだからあのさあ…」

あっちィ。んだこれ。あっっっっっっついわ。

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