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自分は主に外回りが多いのに対し、四木が頭を使う仕事が多いのは知っていた。
謀略、籠絡、子飼いの処理から書類作業まで日夜忙しくしているのだってもちろん知っている。
それでも、

「……えぇ、そうです。その件で…」

二人っきりの時に話されるのは、少しばかり面白くはないわけで。

抱きついてみる――逃げられた。
触れようとする――避けられた。
手を伸ばした――それすらも叩かれて、

「……だんな、」
「少し黙っていなさい。――あぁ、いえ、なんでもありませんよ」

"少しばかり"どころじゃなく、面白くないわけで。

(……旦那が悪いんですよ、)

一気に、手を伸ばした。




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別に嫌っているわけではないし、蔑にしたつもりもない。
ただ仕事を優先した、それだけだっただろう?
あんただって分かっていると思っていた。

「だんな、」
「――――っ、」

ちくりとした痛みと、囁きよりも小さな、空気に溶けてしまうような声。思わず飲んでしまった息は予想以上に大きくて。

『どうか、されました?シキさん』
「な、んでも、ありませんよ…」
『そうですか……ふふ、』

聞き慣れた若い声が面白がるような色を含む。
あぁもう、腹が立つ。
あれ相手に感情を揺らがすことなんてあってはいけないのに、思わず声に剣が混じるのが分かった。

「なんですか」
『いいえ? それでは、また後日』

ぷつり、と通話が切れた電話を叩きつけたい衝動。
重要なデータももちろんのこと入っているから、即座に止めて横に控えた諸悪の根源を殴ることに渾身の力をこめた。

「いっ………な、殴ることないでしょう旦那」
「五月蝿い、黙れ」

分かっていると思っていた。仕事も私事も、両方理解してくれているからこそ一緒にいるんだと。
少しだけ、落胆。それよりも大きな怒り。

「お前は、粟楠の名前を地に落としたいのか」
「何、が…」

分かっていると思っていた。この男とて、この世界のルールくらいは知っているだろうと。
自分も赤林も、決して低い地位にいる訳ではない。仕事とてそれなりに重要なものだ。
それをこの男は、たった一つの行動で失敗させようとしたのだと。

「帰れ」
「っ…!」
「分かっているだろう。この業界で、舐められたら終わりな事ぐらい」

しかもあのような男に、と睨み付ければ赤林は僅かばかり俯いて。
続く言葉に、目を瞠った。

「だったら、おいちゃんはいいのかい」

声は常を思わせないくらい真摯。まるで、敵を威嚇するときのような強さ。

「おいちゃんは、ほっといてもいいのかい?」

そのくせ動作だけは子供みたいに弱弱しく腕を掴んで。
段々と覚えていた怒りが萎えていくのを感じてしまった。

「…なんて顔をしているんだ」
「……いいじゃないですかい」

だんなはおいちゃんのことなんてどうだっていいんでしょう?だなんて、まるで子供みたいに拗ねて。
あぁもう、なんてことだ。

「寂しかったのか」

ぎゅう、と握り締められても、欠片も痛みはない。

「悪いですか、」
「悪い……と、いうか」

甘え上手というか、甘え下手というか。
どうしてこの男は怒らせるのも怒りを逸らすのも上手なんだろうか。

「馬鹿ですね」
「うっ…」
「……次やったら、叩き出しますからね」

本当に―――ずるい。
甘やかすつもりなど無かったはずなのに。

「まぁ、でも……今日は、私も悪かったとは思って、います」

ぱ、と顔を上げて笑うこの男が、結局嫌いになれないままに甘やかす。
馬鹿は自分か、と小さく笑いが漏れた。

「だから旦那好きですよぉ」
「私も……嫌いじゃありませんよ」

そろりと首筋に付けられたであろう赤い痕を撫でながら、今度からはこの男のいないところで電話しよう、そう決意した。





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ごごていのにしうら様から相互記念いただきました!
やきもち赤林さんかわいいいいい!!
そして四木さんおっとこまえ・・・!ごろんごろん
リクエスト聞いてくださってありがとうございます!!
相互ありがとうございました^^










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