フィクション
 2009.02.01

ここの所夢見が悪い。


@友人の恋人や想い人から誘惑される。

A閉店作業の進む巨大ショッピングモールで係りの人に導かれながら、透明なドアを何枚もあけていく。

B鈴木杏ちゃんの住むマンションに遊びに行く。

杏ちゃんのマンションは広くてコンクリート打ちっぱなしの事務所を改造したみたいな寂しい部屋で、あらゆる種類(業務用、別珍素材、デパートに売ってそうなの、社長さんみたいなの等)の椅子やソファーが雑多に配置されている。

そして彼女は、エイズだか白血病だかで身も心も病んでる弟と一緒に住んでいる。
事実、杏ちゃんにそんな弟がいるかは知らない。

あと、何故か私は手のひらに余る位のサイズのビデオカメラをずっと回していた。

杏ちゃんに言われて気付く。

『でもこの部屋眺めがとってもいいの』

文頭についだでも゙に気を取られながらも窓の方に目を移すと、ベランダの外はハワイのようなサンビーチ、真っ青な空と海が広がり物凄い人で賑わっている。

何か祭りやイベントでもあるのだろうか、海外製のカラフルな風船を持った子供達や謎の被り物をしてはしゃぐ大人の外人多数、異国情緒溢れる風景。

突然現れたその光景に思わずマンションを一人飛び出す私。
折角クッキー(恐らく手作り)と紅茶(とても香り高いもの)を出してくれた杏ちゃんにお礼も言わずに。


外に出て輝くビーチにたどり着いてみると案外日本人も多い。


そして、奇抜な格好をして浮かれる日本人だか外国人だかの人並みを縫うように歩く私は、気づけばあの人からはぐれていた。


いつの間にかあの人が恋人と家族とこのビーチにきている設定が組み込まれていて、私は気を使い心を少し傷めながらそれでもあの人の姿を探す。

迷子みたいな気持ちに胸が締め付けられて、とにかくあの人に会いたくて仕方なかった。


あの人の後ろ姿を思い出せない自分に焦って、一緒に来ているはずの恋人に気を使って私はいつの間にか泣きながらカラフルな人の波を四苦八苦しつつかき分けていく。
浮かれた人間は周りが見えていないから残酷だ。

結局夢の中で彼を見つける事は出来なかった。

せめて杏ちゃんの弟にもう一言くらい励ましの言葉を贈れば良かった。



C夢の中で彼の恋人に会う時、いつも私は寝間着にスッピンの汚い格好で、実際には一度も見た事のない彼の恋人はとても綺麗で華奢で勝てる所なんて一つもないと毎回思う。

失礼極まりないけど、私と三年も付き合ってた位なんだから、あの人にそんなに綺麗な恋人が出来るとは思えないし、何故私が今更あの人の恋人と会って互角に張り合おうとしているのか謎。

張り合えるとでも思っているのか。

でもこういう夢は決まって優しい淡い色に包まれていて、今回もうっとりするような木漏れ日と蒼蒼と生い茂った草木の間に輝く海の景色があった。



D実家に帰る夢。

用事を終え実家に帰ってくるくたびれた私。
しかし家には誰もいない。
締め出しをくらい途方に暮れていると、マシンガンを両肩に担いだ知らないおじさんが背後に現れる。
おじさんは無言で私に家の鍵を渡し、私の背後にぴったりとくっつく。

実家の錆びた鍵穴に手間取りながらやっと開いた引き戸の扉を、私は自分だけ中に入れ素早く閉めた。


中から鍵をかけようと必死になるが、錆びた鍵は閉める時もなかなかかからない。

マシンガンを持った知らないおじさんは怒り狂うかと思ったけど、案外あっさりいなくなった。


未だ緊張の解けない私が肩で息をしながら振り向くとそこにおじさんが立っていた。

ぞっとした。

お互いに目を逸らさず、一切動かず、只時間が過ぎる。


ふいにどちらかの口元が動く。

にたり。



笑ったのは私。


飛びつくように素早く、おじさんの頭に両腕をまわし、おじさんの唇に噛み付く。
胸をわざと押し付け、乱雑なキスをする。


最終的に押し倒されて、寝転がった私は逆さまになった実家の玄関の景色をおじさんの頭越しに見つめる。

引き戸の磨り硝子に映る灰色の曇り空がやけにリアルだった。







なんという女臭さ。
なんという欲求不満具合。
なんという精神状態。

私の性格が悪い。



そして今日は変な咳をして起きたから肺が痛い。

人の夢って怖いよ。

夢に気をとられ過ぎると気が触れるからちゃんと戻ってきて。

こんなの日記に書いて人に見せるもんじゃないね。


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