ぽかぽかと暖かい日差しが大変心地いい卯月中旬のとある日
佐助の急な思い付きから、急遽集まった暇人四名で花見に行くことになった
政宗、幸村、かすが、佐助の四人であるが、連絡を回した他の者達は残念ながらバイトやら既存の用事で参加できないとの事だ。計画も何も無しの唐突な誘いなのだから当然と言えば当然である
仕方無く、用事もなく時間を持て余していた四名でのみ花見を行う事になった
佐助の家の近くの川縁には、花見には持って来いの桜並木が存在する。用意したシートを日当たりのいい場所に敷いて、準備は完了だ
「はいこれ俺様特製花見弁当!」
「む、やはり流石と言うべきか。凝っておるな」
「飲み物も一応買ってきたぞ」
「Good vibes!たまには花見なんかも悪かねぇな」
快晴の空に後押しされてか、各々の気分は上々だった。気付くと周りには他にも何組かの花見客がいて、辺りは少しだけ騒がしくなっていた
「蕗の薹の天ぷらも良いが、この筍の煮物も美味でござる!」
「真田、お前は本当に食べてばかりだな」
「かすがだって遠慮しないで食べてよ、この稲荷寿司とか結構自信作」
「Huh,中に入ってんのは桜葉か?」
「その通り!塩漬けにしたのを刻んで混ぜてみました」
「…悔しいが器用だな、それだけは認める」
かすがに誉められた佐助がにへーっとだらしのない笑みを浮かべる。その横で口一杯に稲荷を詰め込んだ幸村が咽せていた
「馬鹿、あんまり急いで食べるからだ。これを飲め」
「す…すまない…」
かすがに背をさすられながらゴクゴクと勢い良くペットボトルのお茶を飲み干した幸村は、ふうと深く溜め息をついた。心なしか青い顔をした幸村に佐助が大丈夫かと尋ねる
「ぬぅ…なんだか気分が優れぬ…」
「かすがの言った通り、あんまり急ぐからだよ旦那」
「花見の席ってなあもっとelegantに楽しむもんだ。ほら俺を見てみろ」
何故か正座に座り直し、優雅な貴族の花見という建て前で一人芝居に入った政宗を綺麗にスルーした佐助とかすがは、半ば呆れ顔で幸村の顔を覗き込む
「Uh...もう少しmoodが欲しいな。オイかすが、そこの枝つついて桜降らせ」
「顔色が悪いな…大丈夫か」
「某、一生の不覚…ぅぷ」
「ちょ、吐かないでよ!取りあえず横になって」
「オイthroughするなよ、cherry blossomをflutterしてくれよ」
「…仕方ない。膝を貸してやる、寝ろ」
「へ!?駄目駄目いくらなんでもそれはズルイ!」
「そうか分かったぜ、俺が余りにも様になりすぎて見るのが怖いんだろお前ら」
「お願い100円あげるから黙ってて竜の旦那」
かすがに引き寄せられるがままその膝に頭を乗せた幸村は、いつもなら出るだろう例の台詞を言う余裕すらなく、既にぐったりとしていた。心配そうに上から覗き込むかすがが幸村の頭を数回撫でると、その光景を見た佐助が絶句する
「ちょ、ちょっとちょっとかすがちゃん?いいんだよそんなに甘やかさなくても。旦那ってば自業自得だもん」
「拙いぞ佐助、真田が峠を迎えている」
「何でこっちはこっちで微妙に別の芝居に入ってんの!?」
「あっやべっ、なんか俺も目眩が…」
「真田、一回寝てしまえば多少は楽になるかもしれないぞ」
「あー俺これ寝た方がいいな、結構なheadacheだ」
「その辺にでも転がっていろ」
「ひどくね、何が酷いって扱いの差がひどくね」
文句を垂れる政宗を無視しかすがが幸村の様子を窺っていると、多少は落ち着いたようで体を僅かに起こして見せた
「大丈夫か?」
「うむ…、幾分楽になった。感謝致す」
「ああ、気にするな。まだ気分が悪いようならいくらでも貸すぞ」
「すまない、もう少しの間良いでござるか?」
「いいぞ、ほら」
「旦那自粛しろ!」
「そろそろchangeだ、change!」
見たこともない優しい笑顔を幸村に向けるかすが、それに答えるように少しばかり赤らんだ顔で笑みを返す幸村。何とも言えないその場の雰囲気を感じ取った政宗と佐助は気が気でない
「かすが殿、髪に花弁が」
「ん?どこだ?」
「ああ、動かないでくだされ」
「Stop!俺がとる」
「いや俺様がとったげる!」
「う、ちょ…っ!やめろ貴様ら!」
両側から伸びてきた手を避けたかすががしゃがんだ隙に、前髪についた花弁を幸村が取り去った
「ありがとう。…あ、」
「ん?どうなされた」
「真田、お前もついてる」
「ぬをっ!ど、どこに」
「ふふ、取ってやるから落ち着け」
幸村の後ろ髪についた花弁をかすがが取り去ると、二人はどちらからともなくおかしそうに笑い合った。はたから見れば微笑ましい光景だが、これを血眼になって見ている男が二人
「羨ましいことこの上なし…っ!」
「煩いぞ佐助」
「真田テメェどきやがれ!もうとっくに回復してんじゃねーか!」
「む、政宗殿、何をそんなにかっかしているのだ」
「顔色普通に戻ってるし!絶対完全復活してんじゃん旦那!」
「う…何故これ程までに某が責められなければならぬのだ」
政宗と佐助に文句を浴びせられる真意が分からずしゅんとした幸村を見かねたかすがは、
「貴様ら二人揃って何なんだ!真田、気にすることはないぞ」
と、完全に幸村の味方と化した。此方は此方で二人揃って超が付く鈍感である
「けっ、真田にばかりいい顔しやがってよ」
「気持ちは分からなくもないけど…じゃなくてかすがに喧嘩売ってどうすんの!」
「だって本当の事じゃねぇか」
「ふん、何を勘違いしている。私はそれ相応の対応をしたまでだ」
「んだと、」
「日頃の行いを思い出してみろ」
「Ah〜…」
「そこは納得するのかよ」
政宗がかすがにしてきた日々の不祥事を今頃になって痛感していると、元気を取り戻したらしい幸村が立ち上がった。その隙を逃さずかすがの太腿にダイブしようとした佐助の顔面には、彼女の容赦なしの肘鉄がめり込んだ
「ッいってェェエ!」
「次来たら拳骨な」
「真田、俺とbattleしろ」
「ぬ!勝負でござるか!」
「待ってそれ俺様も混ざる」
「いいか、たった今から全員が敵、この場も花見会場なんてbrightlyな場所じゃねえ。戦場だ」
「くだらん。何する気だ、周りに迷惑になるような事だけはやめてくれ」
「優勝者にはspecialな席を設ける。かすがの膝枕という、王の玉座をな」
「ふざけるな絶対に嫌だ」
「かすが、俺様の勇士をしっかり見ててよ」
「勝負事となれば某も負けるわけにはいかぬ!みなぎるぁぁぁああああ!!」
「OK.Battleの内容は…『1分間に落ちてくる花弁を何枚取れるか』、これに決まりだ。かすが、1分のcount頼むぜ」
「子供か貴様ら」
結局、花弁を夢中になって捕まえる男三名という奇怪な光景に周囲の痛い視線が集中し、それに堪えきれなくなったかすがは黙ってその場から立ち去った
周囲の視線など全く気にしないといった様子で熱中していた三名がその事に気付く筈もなく、カウント役をなくした勝負は日が暮れるまで続いていた
終
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幸村とかすがはやぱりいいですね…!幸かすっ幸かすっ!!!