「さむい」

ぽつりとソーマ先輩が呟く。

「寒かったですか? すみません、今暖房を……」
「いらない」

ここは私の部屋で、今は二人きりで、私達は所謂恋人同士で、そしてソファーに腰を下ろした先輩は静かに立ったままの私を見つめていて。

「寒いんですか」
「ああ」

部屋は寒くない。だって彼の方が私よりずっと厚着だし、寒さにも強いのだって知っている。

「私も寒いです」
「ん」

先輩が望むであろう言葉を返せば、小さく答えられる。今回は多分、早くしろとかそういった意味だろう。
ソファーに向かい、先輩の背中に両手を回す。ぎゅうと力を込めて抱きつけば、お返しとばかりに背中に腕が回される。甘えるように胸に頭を擦り付ければ、薄く笑う気配がする。

「寒いですか?」
「いや、」
「なら良かったです」


(甘えかたを知らない不器用なあなたがいとしい)


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