Clap
最近一人の子供が遊びに来るようになった。

その子供は賽銭箱の横に座っている事が多い。
そして時々溜息とともにこう呟く。

「つまんないな…」

それを聞いてある日僕の心が動いた。
そして気が付いたらその少年の前に立っていた。

「こんにちわ。」

少年は不思議そうに僕を見上げた。
僕はニッコリ笑うと手を差し出した。

「僕は耀心(ヨウコ)。君は?」
「ヨウコ?女の子みたいな名前だね。僕は虹(コウ)。」
「虹か…かっこいいね。」
「ありがとう。」
「いつもここにいるよね、どうしたの?」
「……」

虹は黙って下を向いた。
僕は虹の隣に座ると、同じ質問を繰り返した。

「パパとママの帰りが遅いんだ。だから帰ってもつまらない。」
「友達と遊べば?」
「習い事皆してるんだ。」
「虹もなんかすれば?」
「僕はモデルやってるから出来ないの。モデルのお仕事がない時は暇なんだ。」

そう言って虹は溜息を吐いた。
僕はそんな虹の手を引いて向かえの公園に向かった。

「?」
「じゃあ僕と遊ぼう。」
「え…」
「僕も暇なんだ。ね、一緒に遊ぼう。」

そう言って半ば強引に虹を公園に連れて行った。


どれくらい遊んだだろう。
辺りはすっかり暗くなっていた。
それでも遊ぼうとしていたその時

「虹!!」

公園の外から虹を呼ぶ声が聞こえた。
たぶん親御さんだろう。

僕は虹を見ると、口に人差し指を当てた。

「虹、お迎えだ。いいかい。僕の事は内緒だよ。いいね。」
「耀心?」
「さ、おいき。」

僕は虹の背中を押した。
虹が数歩前に出て振り返った。
けど、僕の姿は見えない…ようにした。

「耀心?」
「虹!!」

虹の両親と思われる男女が現れた。
どっちも凄く美人だった。

「こんな時間まで何してたんだ?」
「夜は危ないのよ!!凄く心配したんだから…良かった……。」
「…ごめんなさい。」
「虹、独りで遊んでいたのか?」
「……う、うん。」
「そうか…海南、やっぱり虹を事務所に預けよう。」
「そうね、ごめんね、独りにして。」
「うぅん、大丈夫だよ。それよりごめんなさい。」
「いや、私達も悪かったな。」
「これからはお友達と遊ばない日は事務所に行こうね。」

そんな会話をしながら虹は去って行った。
一度だけ僕が消えた場所を振り返って。

「耀心、寂しいですか?」
「理(マコト)か。」
「驚きましたよ。下界に降りたと思ったら子供と遊ぶなんて。」
「ほんの羽根休みだ。さ、帰ろう。」
「はい。業務が滞ってますので。」

そう言って私達も天界に戻った。

子供と時々遊ぶのも悪くない。
そう、思った一日だった。

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