キスの日
「今日はキスの日だって」
朝食中誰にともなくそう呟いてみると、サトシは口元にパンのカスをつけたままポカンとした。
「きすって何?」
思わずずっこけそうになった。
そういったことに無関心だとは分かっていたけど、まさかそこまでとは…
呆れた様子のアイリスが盛大にため息をつく。
「サトシってばホントお子ちゃま!その…つまり、ちゅーよ、ちゅー!」
「ふうん、そうなのか」
で、そのキスの日って何?なんて首を傾げるサトシがかわいくて。僕の悪戯心がくすぐられるわけで。
「キスの日っていうのはね、日頃親しくしている人にキスで感謝の気持ちを伝える日なんだ」
なんてね。
笑顔で嘘を吐く僕にアイリスが何か言いたげだったけれど気にしない。
顔を赤くして困惑するサトシを想像して、緩みそうになる口元を押さえつつ顔を上げると。
ちゅっ
「…へ?」
目の前には無邪気に笑うサトシ。唇にはまだ残っている感触。
「いつもありがとう、デント!」
(…や、やられた…!)
どうしたデント顔真っ赤だぞ?なんて素で言っちゃうんだから、天然って恐ろしい。
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キスの日
(後で仕返ししてもいいよね?)
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