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「ジュミ様には、何歳頃から仕えてらっしゃるんですか?」
ラノに誘われた外出中。
私がこいつに買ってもらった棒付きキャンディーを舐めているとそんなことを聞いてきた。
「昔から。生まれたらもうジュミ様の魔女だったし」
私を誘ったくせに、いざ外に出たら行き先は決まってないとか言ったラノ。仕方なく街を歩くことになった。
雑貨屋でぐるぐる模様のキャンディーを買い、そのまま歩いている。
「ママが旦那様の魔女だったから」
「なるほど。そうだったんですか」
にこにこ、にこにこ、にこにこ……
こいつ何が面白くてこんなに楽しそうなんだろう。もしかして私の頬にジャムがついてたり?
「僕は坊ちゃんに直接雇っていただきました。付き合いは10年前ぐらいからですかね」
「へぇ……」
こいつと出掛けても絶対間がもたない。そんなことを心配してたけど、どうやらそれは杞憂だったらしい。
ラノはぺらぺらと何でも話してくれて、意外と楽しかったりする。しかもお嬢様の家庭教師みたいに小難しい話じゃなくて、例えばどこのお菓子が美味しいとか、どこのケーキは食べるべきだとか。
実は甘党……?
「あ、リセミルさん。そこのケーキ屋入りません?『ダンセン』っていう、最近人気のケーキ屋なんですよ」
「そうなの?行く!」
そのくせ、ケーキ屋に入ってもラノは紅茶しか頼まない。砂糖もミルクも入れないで、苦い苦いストレート。
私ばっかり美味しいもの食べても、ラノは楽しくないんじゃない?って思うけど、ラノはにこにこ笑ってるからそんなことはないらしい。何が楽しいんだか。
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ケーキ屋を何軒もハシゴして、雑貨屋にいって、気付けば空は茜色になっていた。
お腹はいっぱい。ケーキの食べ過ぎで気持ち悪いくらい。
「絶対夕食食べらんないよ」
「でも、楽しかったでしょ?」
尋ねられて頷いた。楽しかったし美味しかった。
「また誘いますね」
「うん。待ってるね」
(今度は私から誘おうかな、とか)
まったくこれっぽっちも思っていない。
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ヤマもオチも全くない話。