「ジュミ様には、何歳頃から仕えてらっしゃるんですか?」

ラノに誘われた外出中。
私がこいつに買ってもらった棒付きキャンディーを舐めているとそんなことを聞いてきた。

「昔から。生まれたらもうジュミ様の魔女だったし」

私を誘ったくせに、いざ外に出たら行き先は決まってないとか言ったラノ。仕方なく街を歩くことになった。

雑貨屋でぐるぐる模様のキャンディーを買い、そのまま歩いている。

「ママが旦那様の魔女だったから」
「なるほど。そうだったんですか」

にこにこ、にこにこ、にこにこ……
こいつ何が面白くてこんなに楽しそうなんだろう。もしかして私の頬にジャムがついてたり?

「僕は坊ちゃんに直接雇っていただきました。付き合いは10年前ぐらいからですかね」
「へぇ……」

こいつと出掛けても絶対間がもたない。そんなことを心配してたけど、どうやらそれは杞憂だったらしい。

ラノはぺらぺらと何でも話してくれて、意外と楽しかったりする。しかもお嬢様の家庭教師みたいに小難しい話じゃなくて、例えばどこのお菓子が美味しいとか、どこのケーキは食べるべきだとか。

実は甘党……?

「あ、リセミルさん。そこのケーキ屋入りません?『ダンセン』っていう、最近人気のケーキ屋なんですよ」
「そうなの?行く!」

そのくせ、ケーキ屋に入ってもラノは紅茶しか頼まない。砂糖もミルクも入れないで、苦い苦いストレート。

私ばっかり美味しいもの食べても、ラノは楽しくないんじゃない?って思うけど、ラノはにこにこ笑ってるからそんなことはないらしい。何が楽しいんだか。

**

ケーキ屋を何軒もハシゴして、雑貨屋にいって、気付けば空は茜色になっていた。

お腹はいっぱい。ケーキの食べ過ぎで気持ち悪いくらい。

「絶対夕食食べらんないよ」
「でも、楽しかったでしょ?」

尋ねられて頷いた。楽しかったし美味しかった。

「また誘いますね」
「うん。待ってるね」



(今度は私から誘おうかな、とか)

まったくこれっぽっちも思っていない。



-----------------

ヤマもオチも全くない話。








第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
第4回BLove小説漫画コンテスト開催中
リゼ