17【動物】
 2022.05.02 Mon 15:31

【動物】

鳥雲に入る

○森一夜鳥雲に入る大鳥居

鳥の巣

○鳥の巣やキリンの首の案内役

小鳥の卵

○二度三度オーバーオールや小鳥の卵
○もしかして終の棲かや鳥の卵
○銭湯や白きデニムに小鳥の卵
○落ちたるや小鳥の卵爪の色

雀の子

○献立を跳ねてささめて雀の子
○子雀や夭折をして玉子焼



○囀や大斎原の大鳥居
○囀や歌集の名前きになる眼
○囀やよき傍らに寝惚けたり

帰る雁

○即ちと帰る雁なり中尊寺

白鳥

○白鳥や柴田の殿様眠りけり

大石家より



○雉笛の山の如しや赤穂の士
○妻多き雉の姿やいちどのみ

花鳥

○花鳥や境内清く掃かれたり

百千鳥

○何坪の声になりけり百千鳥
○百千鳥音楽ホールのナポリタン

雁金

○雁金や煙管に顔をこしらえる



○鶯の一声にして窓開く

呼子鳥

○呼子鳥風魔にしたり猿にしたり
○横目みろ鬼母もなく呼子鳥

春の鳥

○女子旅の荷物小さき春の鳥
○東北の誰や行くなり春の鳥
○劇場や新しくなり春の鳥
○でこぼこや電車の過ぎて春の鳥
○春禽や隣近所の喫茶店
○春禽や初体験の指名打者
○春禽や愛称の佳き文学館
○図書室の表紙となるや春の鳥
○春禽や正統派なり可愛い子ちやん
○春禽やコンビニ無くも花屋あり
○春禽や公園カレーの止まりの木
○春禽やポーチ小さき気分なり

田螺

○散り散りに姿の消えて田螺かな

烏貝

○永遠のロック小僧や烏貝

望潮

○汐まねき上手くなくても渋谷系
○汐まねき現代アートの予報率



○夜蛙や蒼鉛の空赤くなり
○夜蛙やそら蒼鉛となりにけり
○初蛙革靴のまだあるだろう
○初かはづ名前呼ばれて驚きぬ
○初蛙帰ることなき停車場よ

蟻穴を出づ

○蟻の出てよき工芸の町となる
○蟻の出て妻の散歩の長かりし
○蟻の出て勝ち負けひとり反省会
○蟻の出て尻のあがった女の子
○蟻の出て通り抜けた蔵の町
○蟻の出てカセットテープの玄人筋

初蝶

○初蝶やかけ地下鉄のワンピース
○初蝶や淡き夢にも都会なり
○初蝶や広きひさしの競技場
○初蝶や好事家の色うりざね顔
○初蝶や乗降客の少なかり
○初蝶や個人商店総構え



○花虻の個人的には迷いけり
○花虻やパンダのニュース流れけり

蜂の巣

○蜂の巣やレモンサワーの指名打者



○蜜蜂のアイデンティティーや通の旅
○蜜蜂や紅茶の色を尋ねたり
○蜜蜂や紅茶と割りしアイスティー
○蜜蜂やお試しサイズの如くなり
○蜜蜂や自家製の菓子豊かなり
○蜜蜂や勲章さえも辞退せり
○蜜蜂や紅茶にふたり語らいぬ
○蜜蜂やカフェに語らふ過ごし方
○蜜蜂や伝統的なシルエット
○蜜蜂や上品でかつ然り気無き
○蜜蜂や彫金の打つ音の空
○蜜蜂や消えて久しき造園家
○蜜蜂の空庭園となりにけり
○蜜蜂にやたら親しき彫金家

鷦鷯

○谷あいに老子わたらんみそぎさい

鴛鴦

○鴛鴦や美に求愛の契せり
○鴛鴦に流れの早き時世かな

鴛鴦

○鴛鴦のふれあふ山河ありにけり
○鴛鴦のしづかに進む里の雨
○鴛鴦の本質を知る学者かな



○かいつぶり古墳の主や知らぬけり
○何や見て何を語らんかいつぶり
○のぼり頃国開きけりかいつぶり
○かいつぶり空ひとつなり惜みける
○不得手なる空逆さまにかいつぶり



○梟やねぐらを映す人の影
○梟や己の影しか見えぬ人
○梟や森の流転を知らぬ人
○梟や森の影しか見えぬけり
○梟や隠逸として物思ふ

寒雀

○お互いの距離もふくめて寒雀
○東京を座りてふくら雀かな


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