9【生活】
2022.05.02 Mon 14:59
【生活】
雛市
○雛市や隣におよぐ熱帯魚
雛祭
○面影を母覆うなり雛納め
○横たはる冷たき顔や雛祭
○対の雛おもく美貌となりにけり
○手土産の母娘雛祭
○千切りの髪元白し雛祭
○花活けて僧喜びぬ雛祭
○男雛女雛に夫婦雛祭
○泰平をうらなう物や雛祭
○古雛のたづねる人もなかりけり
○雛流す童かえりや手をつなぎ
○古書店にふける男や雛祭
○ひいなさま手元に置いて不登校
○酒いける口の女や雛祭
○忘れける傘小ささや雛祭
冬籠
○古本や猫をまくらに冬籠
掃納
○掃納開かれてをる戸の向かう
○音も止み静かに過ぐる掃納
○大勢が小勢となりし掃納
○据風呂に水ながしたる掃納
○掃納して夜美しき門構
○紙くずや目的もなく掃納
火事
○ただひとつ社の火事や真赤なり
○暁の火事に不安を覚えけり
○少年の通つた道や火事の中
○鎮火して大人の足や重からぬ
熊手
○七福鯛全部のせたる熊手かな
○かつこんで熊手守りや月の中
○落ち着いて熊手守りや飾りけり
○百万の熊手や足を引きとめり
卒業
○卒業や無口な人のさようなら
○漆黒の双眸つねに卒業す
○卒業や机の角の汚れをり
○卒業や水槽四辺うす明かり
○卒業や逆さ箒の綿埃
○卒業や壁に傷ありアカサタナ
○卒業や胸いつぱいに吸いにけり
○卒業や玉挟まれて体育館
○卒業や鉄道写真家帰り道
○卒業や硝子の穴の二三枚
○卒業や生徒会長美人なり
○ある人の鎌倉の海卒業す
○卒業や犬も馴染みとなりにけり
○卒業や花の色なり武家屋敷
○卒業や飼主の部屋空となり
○卒業や香水の瓶倒しけり
○卒業や夕暮れ撮影してみをり
○卒業や切り分けてゆく写真像
○卒業や整髪料の残りをり
○双眸に光る点あり卒業式
○卒業や上の句遠く胸ボタン
○卒業や変わらないことを白眼視
○卒業に心と心絵文字かな
○卒業や市場にならぶ蛸のあし
春休
○ギター持つ裸足の女神春休み
○春休母のデニムの穿き心地
○母娘デニムならべて春休
入学
○手づからや靴そろえたり一年生
○入学や蟹たべたいと思ひけり
○入学やドラマチックなコスメなり
○入学やジェンダーレスを買いにけり
○入学や美人じゃないのでルーティーン
○入学式ばばの手を引く村はづれ
○入学式むしろ私が嫌いなり
○入学に貴殿は誰ぞ気になりぬ
○入学や心をつかむ人のこと
○入学や白いタイツの女の子
○見逃すなわたし逃すな入学式
○入学や白きタイツのむり笑ひ
春の夢
○胸板や挟まれてをり春の夢
初夢
○初夢や額に見立てて冨士の山
○初夢や絹地優しく柔らかく
初釜
○神官の竹瑞々し初手前
○神官の手作り菓子や初手前
○神官や花に遅れて初手前
○初釜の火やあたたかき心の窓
能始
○白黒の面の払い能始
○白黒の隠されたるや能始
弓始
○胸当てのふくらみかけて弓始
○神の乗るゆがけのごとき弓始
○所作も良き息ととのいて弓始
○その道の顔揺るぎなき弓始
○恋の道捨てる覚悟や弓始
○近遠や美しくあれ弓始
○神々や日輪の引く弓始
○肩幅の足袋美しや弓始
屠蘇
○屠蘇代わり三口すすむや養命酒
○屠蘇として三口すすむや養命酒
○屠蘇かはり三口すすむや養命酒
橙飾る
○橙をさながらに据え陰陽師
○橙を飾りつい出て父のこと
○橙をいくつ飾るや母のこと
○素朴なる家に橙飾りけり
○橙の飾りや据えて同じこと
○橙の安定よくてうれし人
○橙の安定も良くすわりけり
飾海老
○強者や鎌倉海老を飾りけり
○武士どもや鎌倉海老を飾りけり
○伊勢志摩の髭の辺りや飾海老
○足袋白く声も張りあり飾海老
雑煮
○静やかの椀に流儀の雑煮かな
門松
○鎌倉の農夫しずかや門の松
若水
○若水や歌の如くに持ち帰る
○若水や水占いの如くなり
獅子舞
○獅子舞や江戸にもたらす松の色
鏡開き
○万物の息吹しづかや鏡割り
鏡餅
○良人や袴の襟の鏡餅
○鶏の音しずかなり鏡餅
○復活を敷いて伸ばすや鏡餅
○整然と店にありけり鏡餅
○伝統の形好しとし鏡餅
○凛々と折目ただしく鏡餅
○大小の目出度き物や鏡餅
新米
○新米や名水ごとく皿の上
○名水を握るむすびや今年米
○おにぎりの名水白き早稲の飯
初竈
○しづけさの廚の君や初竈
○福種を満ちあふれたり初竈
○福神の巡拝したり初竈
○初竈片前足をあげてをり
○独り身を招き猫なり初竈
○大家族分の形や初竈
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