4【植物】
 2022.05.02 Mon 14:45

【植物】

杏子

○かわいらしい杏子のやうな男の子
○完熟の杏子の皮やくちで剥く
○欠伸して杏子や友と密にせり
○黒髪のにぎる杏子のお姫様

新緑

○新緑や四川の街のより所
○新緑の茶座や気ままに茶器の音

新緑

○新緑や水面の玉を飛ばしをり

若葉

○暗闇の光のごとき若葉かな
○一遍の音の如くや若葉吹く

青葉

○草原の緑のなかの青葉かな



○晴天のダムに沈みし桜かな
○厳しさを嘘に嬉々せる桜かな
○阿弥陀仏うねりにふれて桜かな

躑躅

○暁の涙のごときつつじかな

春の筍

○春筍や頭並べて夜の明ける



○飯うまき蕨やとうに遊びをり



○薇や山形村の大名主

雛罌粟

○ポピーといふ少しおどけた女の子

桃の花

○黒姫にささめき落とす桃の花
○黒姫や色気づきたり桃の花
○黒姫の襦袢めくれて桃の花
○桃の花咲いて恥じらふ飯豊山

ミモザ

○カンバスを悠々と抱くミモザかな
○カンバスに子犬を連れてミモザかな
○フェリーよりミモザの君や南下せり
○ミモザ咲き農夫や妻に流れ去る
○牛飼いのむすめのごときミモザかな
○抱き締めてミモザやけふも色を増す
○抱き締めて誕生したるミモザかな

山桜

○清流の音にゆられて山桜

花筏

○風やなく名もなき沼に花筏

落花

○老木の幹や濡らして桜散る

菜の花

○菜の花や自慢の窯の釉薬
○菜の花にバスさよならと出合いかな
○菜の花や写真家の目に近代化

蕗の薹

○純白の予知といふべき蕗の薹



○なにごとも異なるいろや梅の花
○悲しみも人それぞれや梅の花
○梅が香や胸に幾度も咲きにけり
○梅の花おのれひとりの名所かな

辛夷

○一天に触手をのばす辛夷かな
○三角の山より高き辛夷かな
○一本の辛夷の道を帰りけり
○辛夷咲く他に名のなき熊野川
○やまあららぎ山の青さをつかみをり

一人静

○下るより登るがやすし一人静

二人静

○お不動の水一筋に二人静

春椎茸

○影やもうしつかりとあり春椎茸

紫雲英

○虫たちの衣となりし蓮華草
○蓮華草風や野に来て無農薬
○写真家のほころび癒えぬ蓮華草

チューリップ

○草原の湯に浮かべたりチューリップ

メロン

○静かなる銀座通やメロン食ぶ
○袖を引く女の脚やメロン食ぶ

蚕豆

○蚕豆の尻ならびたる小鉢かな

茄子

○眺望を図面くわしく茄子かな
○一品の光のなかの茄子かな
○ことごとく油に滑る茄子かな
○水飲みて江戸紫の茄子かな



○味わいの花もかわらず日本海
○つつましや花のふれ合ふ日本海

海苔

○悠々と海苔のつづくや松の島



○栗おこわねばるみたらし桜かな
○数学の目元涼しき落花かな
○落花して領収書なりアスファルト
○数学の思いの数を桜かな
○数学を出でて二階の桜人

花見

○すぐにある日常のほら花の宴
○東北の歌も聞こえて花見かな
○静かなるやかんの声や花の宿
○ゆるやかに香る街角さくら狩

葱坊主

○葱坊主未曾有なことの夜となり
○葱坊主未曾有なことの思ひけり
○葱坊主無常な夜を過ごしけり


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