2【水の生物】
 2022.05.02 Mon 14:40

【水の生物】

海月

○冥界の巨人の落とす海月かな

白魚

○白魚や光の水をすくひけり



○黄金の雨の女王や魚籠の鮎



○母の手に抱かれて寝る鯨かな
○海水を上げて鯨や昴星
○茫々と月に鯨や髭で濾す

螢烏賊

○身を尽くす海来迎や螢烏賊

平鰤

○平鰤や太く目張りの役者ぶり



○夕鯵の趣あるや石の道

飛魚

○飛魚やまん丸の目の澄みにけり
○飛魚や高校前の夜のふかさ
○飛魚や長いホームに紐結ぶ

初鰹

○俎板に到来したり初鰹
○青春を板あらひけり初鰹
○小田原に差し掛かりける初鰹
○初鰹北鎌倉に電車来る



○社説には食いしん坊や蟹の足
○新しき時計の針や蟹の足
○狂言の隙間にうごく蟹の脚

鮟鱇

○鮟鱇や肥えてこそなりぬめりなり

桜貝

○ダンサーの足下にあり桜貝
○女子寮の気ままな猫や桜貝

いさき

○物云わずいさきの腹や真味あり

海鞘

○工場の明かりのごとく海鞘ならぶ
○美しき未来工場生むや海鞘
○工場の明かりとなりし海鞘の夜○海原の壺となりけり海鞘の朝



○子宝やめざとさもなく蟹の色

緋鯉

○心臓の爆上がりけり錦鯉
○絹衣穂もゆれにけり錦鯉

穴子

○金色の衣の長き穴子かな

飯蛸

○飯蛸や高校前に日の暮るる

白子干

○湘南を驚かしたるしらすかな
○湘南を笊いつぱいにしらすかな
○湘南にしらす三昧訪れる

栄螺

○街道に船を関所の栄螺かな
○街道に皆押し寄する栄螺かな

海鞘

○処女守る乙女の如き海鞘の汁
○浜宿や海鞘といふ名の小鉢あり



○忘れがたき蜆の白き薄明かり
○新妻の厨に独り蜆貝
○妻もなきすべてが無くて蜆貝
○テレビ見てけふも一日蜆貝
○蜆得てひとり親しき雨の夜
○湯上りにアドレスを見て蜆貝

磯巾着

○ブランドの服似合いけり磯巾着
○磯巾着いまだパズルの完成せず
○磯巾着ぬれた女の富士日記
○磯巾着ボスらしからぬボスらしさ

章魚

○大リーグ蛸の酢物つまみけり
○大蛸や両手広げて大リーグ

▲桜鯛

○跳箱を力一杯桜鯛
○俎に型押し当てて桜鯛

逆叉(鯱)

○逆叉の超能力や神の鉾

海豚

○空間にとけぬ魔法の海豚かな
○夕日江の影にささめく海豚かな
○戦争や海豚は愛の泡の中
○ねんごろに海面をゆく海豚かな
○青いほどに海豚の群や深きけり
○色人に寄せて顔見ゆ海豚の目

○少女らの泡に撃たれて海豚すき
○一芸のかなしき海豚誘いけり
○すつと出て挨拶交わす海豚かな
○うづたかし空忘れまじ海豚狩
○大袖の船に近しき海豚かな


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