1【地理】
 2022.05.02 Mon 14:37

【地理】

春の波

○金色の音やしずかに春の波
○銀色に暮れてやさしき春の波

春の水

○春の水ぬれて何もが新しき
○春水やこぼるるばかり縁をゆく
○春水や煌々として彦根城

春の波

○ため息や恋のごとくに春の波
○春濤や恋のごとくに押しもどる
○花弁のため息遠く春の波
○愛といふ息に押されて春の波
○春濤を追いかけたるや空の旅

寒の水

○寒水や蝦夷文学を洗ひけり

春潮

○春潮やどこまで退いて船の行く
○春潮や眉細かりし女の子
○春潮や西海岸の珈琲家

御神渡

○御神渡思いのごとくに弾けたる
○友好の証となるや御神渡
○アイヌ人縄文人や御神渡
○御神渡両手や握るごとくなり

春の川

○春の川さまざまの街抜け出でぬ
○春の川さまざまの町抜け出でぬ
○春の川あまる力や人の波

春の山

○練りきりや掌にのる春の山

春の野

○春の野や色エンピツの書き心地
○胸つんと雑貨気分や春の野辺

山笑ふ

○山笑ふ楚々と眺むる京おんな

残雪

○残雪や仕事多きに眼の疲れ
○おおらかや心豊かに残る雪
○息災と認証したり残る雪

雪解

○雪解の函館山や苦悩せり
○雪解や忘れて友の岩手山

雪間

○札幌の雪間まことに開拓史
○停車場の頬つねりたる雪間かな

氷解

○氷解て小樽の朝や山三方
○氷解やアイヌ模様の首飾り
○氷解に明日をつくるや旭岳
○氷解の手元にあるや旭川

雪しろ

○雪しろや貴婦人の脚ぬらしけり
○雪しろの旅情かなしき小樽港
○雪しろや青き池なり十勝岳
○雪しろを映す粒子や北の空

流氷

○流氷に罅つながれて最後の日
○流氷や繋がれたまま樺太犬
○流氷や電話の声に樺太犬
○シベリアや天使ながるる流氷期
○クリオネの氷流るる岬かな
○流氷の鼻の先つく岬かな
○知的なる知識の厚み流氷鳴く
○北人の顔やごとくに流氷盤
○流氷のものしづかなり日の光

春園

○春園や階級のなき解放日
○春園に己の椅子や共に見ゆ

春の土

○金持の自慢話や春の土
○来年は200億です春の土

春の土

○名声をふりはらいけり春の土
○どこまでも北陸本線春の土
○後継者海かがやいて春の土
○後継者きおくれもせず春の土
○ふつくらの夜具をめくりて春の土

春潮

○春潮や都会暮らしとなりにけり
○春潮や日のうつくしき今もあり



○名瀑や声を落として雨の裏

凍江

○凍江や北に王家の牙を張る
○凍江や牙大ゆらし渡りけり
○凍江や牙に大地をゆらしけり
○凍江やマンモスゾウの対峙せり
○凍江や踏みしめられて骨の形り
○凍江や鱗のごとくひそめたる
○凍江や焼豚麺をすすりけり
○凍江や焼豚麺をすすりけり


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