★やっぱりオイシー自由律☆
 2019.05.10 Fri 21:34

★やっぱりオイシー自由律☆

○泣いて猫居る夜に座っている
○誰も居なくなった夜に橋を渡る
○妻がくれたみかんを自分で買った
○障子の穴が寒い湯呑みひとつ
○野仏に恋猫暮れて人無く
○雨の朝に家を見つめていた
○恋した日石垣に花が咲いていた
○波の音花の種を貰った
○あの鳥はどこに往ったのであらうか
○遂に独り
○遂に独り海が青色
○泣いた泣いた犬が居た夜に
○顔についた蜘蛛の巣は知っている
○妻の夢角を曲がり花屋の前
○寺の座敷にてふまた歩きつづける
○ともしゃんの握った手をあらふ四年目もう会わない
○マネキンを抱えた女の子忘れずに風の中
○蝉なく青空に寝転んで居る
○引越し部活の彼女に雨
○乳房の大きい子とちいさい子がとなり
○笑う声がひとり波の音座って居る
○毛虫が居たのでまたぐ
○教科書に落書きをした女の子に振られる
○挟まったと言ったら女子に告げ口された
○仏の前で泥のように寝ると神が脚を摩った
○やっぱり蟻ははたらいて無かった青空
○豆を叩く女が見ている楠木
○大根をガリガリかじる音が消えた
○ロマンティックが止まらない動物園
○春の虫でてきてこの世は狭い
○春の虫でてきて口を空ける
○春の虫でてきて風にひとり
○世界が笑わない時もあのひとは笑っていた
○行ってしまった舟に秋の草
○横になっていると蝶が歌っている
○病人を待つ犬がこっちに来る
○おねねでながれたまた越えて行く
○ひとり笑ってひとりで寝る
○書いた手紙を犬と投函する
○犬の椀が淡色遠くにも花びら
○師を考えていたら朝が来ていた
○畳にこぼれ落ちた夏野菜を一人見ている
○空になると云うことは障子を開けた
○真っ白な大根をもらい抱えて帰る
○泣く子の隣で横になり花を見る
○語らぬことが増えると心が海のようだ
○泣くひとよ何も無いけれどまたおいで
○また枯草遊んでいる雀に地蔵菩薩
○海の見える小さな家だ道を急ぐ夜
○猫に耳がある幸せ
○カラフルな傘もいつかひとつ
○どこまでも走ったら月に出た
○犬の後をついていく一日
○半分が黄色い春の朝
○君を待つ部屋はなんとなく青く新しい
○冬の改札で別れたきり
○投げ込んでみると海は大きかった
○青葉が雪になっている故郷
○青葉の中で人に会う
○青葉で人に会い秋風
○若葉の中で人に会い秋風
○青葉若葉で人に会い秋風
○雨傘がまだ置いてある
○青葉の雨宿り月かげ
○呼び止められた嬉しさを捨てる
○小鳥かな石の上に青い山
○揺られていると円に黒き山々
○夢か百舌鳥が啼く
○部屋の蝶よ友呼び部屋にひとり
○かしこい犬良夜かな
○犬ころに良夜かな
○畳という宇宙に横になっている
○波音一畳の空
○どんな人間になりたいか口にして青い山
○夜が夜が夜が紫でいっぱいだ
○春の駅のかたすみに置いてきた自分
○逃げ出して寝転んだ若葉の頃
○水の無い海泳いでるそんな自分が情けないと書いた小鳥かな
○お弁当を持って障子をあけて思い立つ
○桜よ犬が喜んでいる
○いま一度戻りお地蔵さまの雪を落とす
○白い花の名前も知らないでもあの子は知ってるよ
○犬猫も可哀想だ火を入れたときの瞳
○埋もれても眩い国盗りの夢
○鍋と心臓の蓋
○心臓の空にシャッター音
○金魚をみて別れる
○釣り堀のある江戸を横切る
○車が光っている駅の夕暮れに足音
○どらやきを貰った春の雨
○ディスプレイを見ている少女が美しい日である空
○ファインダーを覗くといまも貴方は自由な陰影
○雀らがあそんで部屋に風ながるる
○春の駅のうれしさとかなしさいそぐ
○洗濯物がぬれている春の日
○芝のドキドキ白い雲
○不透明な自分が透きとおっていく
○不透明な自分瞳
○障子を開けて雀の声
○土を焼いただけの空
○よい炭が置かれている
○やわらかな緊張感に溶けこんでいく青磁器
○なにも浮かばぬ目をとじ空になる
○人生とは関わったにんげんのバカなとこを見ていくこと
○夏蜜柑に波音駅に向かう
○テキトーなこと言って四十五年
○非人がわたしの糞を掃除してくれた
○瞳という孤独の機関が花になる
○孤独という瞳が花になる
○シルバーという時間の森が胸元
○電車を降り白き蝶に海風
○音楽に合いそしてひとりになった青空
○消えたフェリーにレモンソーダ左右の大空
○盲目の貴公子の行く古戦場に太陽
◯ひとり爪を切る
○爪切る誰も居ず
○氷溶ける爪を切る
○蝙蝠傘に柿の木
○岬も雨夏も無く足音
○砂浜あのひととの暮し
○駆けてくる犬けふたづねてきた
○猫の尻に街すっかりの青空
○動物園の前別れたきりさようなら
○なみだぽたぽたどこを向いても美しい山々
○嫌な物を脱ぎ捨てた手のひら
○御仏よ静かな波音に吹かれております
○神よ春風の器の中も好いものです
○春風の器の底に浮いている
○門の雪手紙を書こうか
○月射し宿となる
○秋が座っている心の大河
○寝たきりの山がペンを取る手紙ありがとう君は若葉のように
○手紙に添えられた匂い星月夜
○雲に乗る物語俺は豚だ
◯両手いっぱいの涙言葉の海
◯そうだったのかそのことでそこに春あり
◯水の中の煙空へ
◯猫の声だれも知らないといふ一つ雲
◯西へあゆみ東へ歩く
◯砂は宇宙の南無阿弥陀仏埋もれていた
◯燃ゆるわたしを止められなかった眼をあける
◯ただ残った海と光
◯寝た青い山秋に入る
◯少年夏草だけ夢の中
◯妻の好きな花の花言葉買っている
◯贈られて来た畳に波音
◯また君かずんずんと歩いていく一休み
◯花屋のまえを通りまたもどる誕生日
◯猫と一日二十年飽きない
◯雀が寄ってきてバタバタ帰ってしまった道を急ぐ
◯毎日同じ蛙理由はある
◯背後から南無阿弥陀仏神の枕もと
○青いそらと青いうみ泣いて花ざかり
○座っていても青い山
○クリームの島々に何を書こうか波の旅
○なんとも匂ふ朝に泣く女が走り出す残り香
○石が萌ゆるような山寺
○石萌ゆる山寺
○乞食なんかになりたくない花ざかり
○乞食なんかになりたくない甘えない
○君のいない昼間ぼくもあるいて初夏ある
○冴えかえる長い旅春風歩いてきた
○出てみたけど波音手紙を書いている
○モヒートは私の初夏の風はあなた任せ
○雨樋から嘘が落ちてくるので爪を切る
○社会不適合と云われた明くる朝放つ
○天の川も旅もひとり
○仏さま仏さま長い旅


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