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懐かしくも楽しかった思い出。土方は伏せていた瞼を持ち上げ、風間に微笑みかけた。
「戻りたいか?その時間に」
「いや、俺が歩んできた道に後悔は無ぇよ。……それに今は……お前が居てくれる」
ぶっきらぼうながらも素直な気持ちを言葉にしてくれる土方に、風間の心が波立つ。
そっと土方の顎に手を添え、己の方へ顔を向けさせると触れるだけの口付けを落とした。
「っ……千景」
「誘うような顔をする貴様が悪い」
「な、何馬鹿な事を言って……っん」
今度は深く舌を割り込ませ、くちゅりと水音を立てながら口内を甘く蹂躙する。
飲み込めない唾液が口端から滴り落ち、土方の首筋を濡らす。
土方が口付けに夢中になっている隙に、着物の前を乱していく。
「ふっ……ぅ」
唇を重ねたまま、白い肌に色付く突起を指先で捏ねたり押し潰したりして愛撫すると、すぐに硬く尖った。
風間に愛される悦びを知っている身体は、すぐに反応を示しもっと愛されたいと強請る。
「もうここを硬くしているのか。……本当に貴様は愛い奴よ」
「ぁあ……っんぁ」
着物の裾を割られ、下帯越しに自身を揉み込まれ土方は身体を身動がせた。
下帯越しがもどかしいのだ。直接触ってほしくて、風間の着物をキュッと握る。それが何を意味するか、風間は知っていた。
クスリと笑み、慣れた手付きで下帯を取り去ると、既に首をもたげて先走りに濡れる土方自身が露になる。
綺麗な顔に似合わぬ淫靡さに、風間の喉が鳴った。
先走りを塗るようにしながら先端を捏ね、輪を作った指で自身を扱いてやれば土方の口から快楽に濡れた喘ぎが零れる。感じやすいのだ。
「あっあっ……ひっぁ」
「歳三よ……、ここを自分で解せるか?」
「はっ……ぁ、ぁあ」
風間が何を要求しているのか土方には分かった。
それは恥ずかしい行為であったが、羞恥よりも快楽を求める気持ちが勝っていた。
土方は弱々しく頷き返すと、桜木に寄りかかった風間に跨がる。そして、自らの指を口内に導き丹念に舐めた。それだけで風間の雄が脈打つ。
口内から銀糸を引かせながら指を抜くと、それを己がヒクつく秘部に宛がいツプリと挿入していった。
「あっ……んっ、ぅ」
熱い息を吐きながら指の出し入れを繰り返し、段々と慣れていくと指の本数を二本、三本と増やしていった。
たまに敏感な箇所を掠めてしまうのか、ビクビクと身体を跳ねさせて先走りを溢れさせている。
「ち、かげ……ふっぁ……ちか……げ、……もう、もう……頼む」
「貴様が十分だと判断しならば来い、歳三」
「んっ……はぁ、はぁ」
熱に浮かされたように瞳を潤ませ、熱い吐息を溢しながら猛った風間自身を取り出すと、跨がったまま彼自身を秘部に宛がい、ゆっくりと中に埋めていった。
敏感過ぎる土方は、風間自身が少しずつ埋め込まれていく度に艶やかな喘ぎを上げてしまう。
そんな彼を前に、ゆっくり過ぎる挿入は風間を焦らした。
「はぁ……んっ」
「歳三よ、少し俺を焦らし過ぎたな」
「えっ……!?ぁっひ、ぃぁああ!!」
風間に腰を掴まれたと思った瞬間、強い衝撃が土方を襲った。一気に風間自身を挿入されたのだ。
その衝撃に、土方は我慢し切れず白濁を放ってしまった。
互いの腹を濡らすそれに、風間は口角を上げる。
「挿れただけで達したか……。貴様は淫らで美しいな」
「かっ……あ、あ」
「すまぬが、俺がまだだ。もう少しだけ付き合ってもらうぞ」
「んぅ……ぁっあ、ん」
腰を掴まれたまま上下に揺さぶられる度、ずちゅずちゅと淫らな水音が響く。
中の熱さに溶けてしまいそうだと風間は思った。いや、むしろ二人で溶け合えたならば……。そう思ってしまう程に、土方が愛しかった。
「はぁ……あっ、熱い……中ぁ……ぅ、ぁっあ……溶けち、……まうよ」
「そう、だな。……っいっそ、一つになってしまいたい」
菫のように綺麗な瞳と、焔のように熱い瞳が重なる。
途端に脈打つ風間自身に、土方の身体が震えた。
「ぁっあ、あ――――!?」
「くっ……ぅ」
土方は中に流れ込む熱を感じながら、二度目の白濁を放った。
土方は、ぐったりと風間にもたれ掛かっていた。
「はぁ……ったく、まさか外でやるとはな」
「何を今更言っている。我らを見ていたのは月と桜のみ。気にする事もあるまい」
そう言って笑う風間。
土方は深い溜め息を吐くが、悪い気もしないのが本音である。
「愛しているぞ、歳三」
「っ……あ、ああ」
不意打ち過ぎる告白に、土方は胸を高鳴らせて頬を真っ赤に染めた。
女相手に睦言を交わすのは慣れていた土方だったが、どうも風間相手だと調子が狂って仕方ない。
けれど己も想いを返したくて、土方は風間の頬に唇を寄せた。
「俺も……愛してる。……ずっと、俺の傍にいてくれ」
それは切なる願い。土方は大切なものを、あまりにも多く失い過ぎた。
「当然だ。お前は俺のもの、そして俺は……お前のものだ」
風間は柔らかく微笑みを浮かべ、土方を強く抱き締めた。離さぬと、何があっても離さぬと言われているようで土方は嬉しかった。
「千景……」
土方もギュッと彼に抱き付き、目尻に涙を溜めながらに微笑みを浮かべた。
そして、内にある愛しい想いを全て乗せ彼の名を呼ぶのだった。
――夜空には輝く月、そして風に乗って散りゆく桜。
今までも、これからも変わらぬであろう風景を、これからは二人で愛でていこう。
終