私たち、似た者同士です(吹冬)
2014.08.10 Sun 19:30
今更ながら、シリーズにする予定
「どうしたの?こんなところに一人で」
彼は私に自動販売機で買ってきた(何故か奢ってくれた)ココアを手渡して、そんなことを聞いてきた。
今年の春、吹雪君は東京にやって来た。本当は地元の高校に入学するつもりだったらしいが、特待生制度やらなんやらを考えた結果、雷門高校が(金銭的に)とても良かったとかで結局こっちに来たらしい。現在は虎屋でアルバイトしながら生活をしているとか。
「吹雪君こそ、どうして?バイトは?」
「バイトは今日元から休みなんだ……まあ、こっちから答えないとフェアじゃないよね」
吹雪君はポツリとそう呟いて、答えた。
「……フラれたんだよね、今日」
私は呆気にとられてしまった。
「その子に彼氏がいるって知ってたんだけどさ、なんか諦めきれなくて……『中学の時から君が好きでした』とだけ言ってきた」
そう言い終えると、彼はカフェオレを一気に飲み干した。私は、とりあえず正直な感想を彼に言うことにした。
「……吹雪君は」
「なに?」
「結構意地悪ね」
そう言うと、彼はキョトンとして、しばらくしてから苦笑した。
「まあ、彼女には申し訳なかったけどね。それでも、いい加減ケリをつけとかないと前に進めない気がしてさ」
「お陰で今日は疲れたよ」と彼は大きく伸びをする。……もしかしたら、こうなることをわかっていて、彼はわざわざ休みの日に告白しに行ったのかもしれない。
「で、久遠さんは?」
「私?」
「僕が答えたんだから、今度は久遠さんの番でしょ?」
……あんまり言いたくはなかったが、聞いてしまった以上此方も言うしかない。
「……私も、吹雪君と同じだよ」
「告白?」
私は頷く。
「彼に好きな人がいるって知ってて、彼がその人に告白する前に告白しようって。まあ、結果は見えてたから、気持ちの準備はしてたつもりだったんだけど……」
「そっか……」
そこから、しばらく無言が続いた。でも、まさか吹雪君がフラれるなんて。確かに、彼氏がいる子なら仕方がないけど……中学時代から好き、か。
彼が告白した相手、誰だかわかったかもしれない。まあ、それをわざわざ言うようなことはしないけれど。
「……ねぇ、久遠さん」
「なに?」
「僕たち、付き合わない?」
彼の思考がどうしてそうなったのかはわからない。でも、彼の声色はどこか真剣だった。
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