ヒメネス嫌い【サイコ2】ルヴィク
2017.11.06
「こんにちは、ヒメネスさん。」
「ひっ」
「うおっ!なんだ、ちくしょう!」
若い女の声がしたと思えば、地面からいきなり有刺鉄線が飛び出して俺の体に絡み付く。
締め付けはそこまで激しいわけではなく、目当ては束縛なのだとすぐに検討がついた。
「動かないでください!セバスチャン・カステヤノス刑事」
ナイフで拘束を解こうとすると、鋭い声が飛んだ。
「あなたのことを傷つけるつもりはないんです。
傷つけたくないんです、お願いします。」
ぺこぺこと頭を下げる、華奢な女が視界に入る。
アジア人なのだとすぐにわかる容姿、長い黒髪、かなり低めの身長。
体にはアザや傷など見当たらず、化け物ではないのだと確認する。
「私、ヒメネスさんとお話ししたくて」
「あっ、おいお前!!」
ぱしゅん、空気が抜けるような音のあとにヒメネスのじいさんの叫び声が響いた。
女の手には余る、それでも小型のハンドガンが握られている。
「……ねぇヒメネスさん」
「ひっ!やめろ!助けて……!!」
「ルベンの研究で食べたご飯はおいしかったですか。」
「!!!」
化け物じみたものではない、普通の女の声だがそれが冷ややかで恐ろしい。
ルベン、ルベン、とどこかで聞いた名前を混乱した頭で考える。
「ルヴィクか!!」
一瞬女が動きを止めて、唇を真一文字に引き絞った。
時々見せられるルヴィクの記憶で、いつも奴はルベンと呼ばれていたことを思い出す。
「ねぇ、ヒメネスさん。」
ぱしゅん、ぱしゅん、
脚や腕にいたずらに撃ち込まれる弾丸。
どうやら殺意はないようだが、それはつまり、痛め付ける事が目的だということだ。
あのじいさんは何をやらかしたんだ、とおぞましくなる。
「ルベンの命で稼いだお金はいくらになりましたか。」
「ひぃっ!やめてくれぇ」
「安心してください、あなたを殺/すのはルベンです。
なにをたくらんでるかは知りませんが、ルベンはあなたをここから、絶対に逃がさない
あなたは絶対に、絶対にここで死/ぬ
…恋人の体が脳しか残っていない気持ちが、わかりますか」
「うわっ!」
激しい頭痛に目を閉じて、次に目を開けるとそこは屋外だった。
幻か?と考えたが、側に倒れたじいさんの傷を見てすぐに否定する。
ガンガンと頭で響くのは、女の最後の一言だった。
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