アニマ怖い【サイコ2】ルヴィク
2017.11.06
「!!!!!?!?」
「どうした」
「いやどーしたもこーしたもっ!!」
青みがかった暗闇があたりを包み、霧が立ち込める。
気温が下がり、息が凍りつくようで、思わずルベンの腕にすがり付いた。
彼はこの状況に特に思うことは無いようで、普段と変わらない興味なさげな視線を遠くのカステヤノス刑事に向ける。
「あああ、あれ、あれが来るよ……」
「お前が追われているわけでもないのによくそこまで怯えられるな
心拍が異様だ、息が苦しいだろう」
「うん」
「落ち着け」
「いや、無理でしょ……」
言い切る前に、カステヤノス刑事が木箱とフェンスの影にさっと身を隠すのを確認した。
……途端に、ざざ、とノイズが入る。
そして聞こえてくる、不快感と恐怖、言い知れぬ不安を煽るような女の歌声だ。
少し音をずらしながら、鼻歌と言うには悪意で溢れ過ぎたそれを口ずさむ。
荒れ果てた黒髪で顔を隠し、薄汚れたボロ布を纏い、かくかくと不自然に体を痙攣させながらなぶるようにカステヤノス刑事を追い詰める。
ルベンの姉、ラウラと共通するものは多いが……彼女は異形に成り果ててもルベンを守るために戦っていた。
「う、うえ……こわ…
カステヤノス刑事大丈夫なのあれ……」
液体が布に侵食するかのように、ゆっくりと障害物をすり抜けるその様は、一言では言い表せないほど。
「、」
ルベンの手のひらが私の目を覆い隠し、肩を押し付けるように抱き込まれる。
「あれは所詮あの男が生み出したあの男の恐怖だ
僕には理解できないな」
「ルベンはさ、本当にサイコなの?」
「…僕がSTEMに与えた影響を見たお前が言うのか」
「ただ、憎しみに狂ってただけじゃないの、
今こうやって私を守ってくれたり
ラウラを生かそうとするのは、」
「…下らないことを言うな
僕自身の利益のためだ」
目を覆ったまま、私を誘導する彼の表情はわからない。
「…ヴァレンティーニは気持ち悪い
でも、ルベンは好き」
「…なんだいきなり」
「ルベンは変態じゃないよね、シスコンなだけで」
「……お前、死にたいのか?」
「ちが、そうじゃなくて
ルベンの世界は怖かったけど
嫌悪感はあまりなかったよ」
「僕をあの変態ナルシストと比べるのはやめろ」
「辛辣…」
「あの変態に捕まりたいのか?
見つかる前に飛ぶぞ」
私の体に負担を掛けない配慮をする彼は、果たして。
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