愛した人は、存在しない人でした。
2010.11.12 Fri
…またあの夢をみた。
夢の中はいつも、薄暗い夜明け前か夕暮れ時。
結構昔の古風な屋敷の一室の中に、蒼色の着物を着たその人と私はいる。
「 」
襖にもたれかかっているその人の名前を呼んでも、何の反応もない。ただ、煙管を吸って襖の外を見ているだけ。
「何を見ているの?」
そう問いかけると、紺色の目を私に向けて
「さぁな」
って言う。
…その人が、私が一番愛していた人に少し似ていて。
それでも「その人」ではなくて。
蒼の君の面影に、あの人を重ねた。
もう、夢にまで出て来ないで。
もう私達は別れたのに。
また悲しくなるじゃないか。
…そんな甘く哀しい夢を見る私、秋の終わり頃。
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