「あの人が死んだ家でなんて暮らせない」
そう言って今日も女は
男が死んだ世界で生き続けている
規模の問題か、無二と無限の違いか
或いは目に映る確かな記憶の断片のせいか
「あの人が死んだこの家で暮らすのは辛すぎる」
そう言った女は
今も男が死んだこの世界を生きる
横顔に涙をちらつかせながら
男がいない世界で
091022
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
リゼ