とりあえず、目が覚めた瞬間から絶望するのは今日で最後にしようと思った。
明るく健康な毎日こそ至上とは夢にも思わないけど、だからといって自分を極限追い込んでも後に残るのは壊れたガラクタ時計だけだと今更知ったので。
切り刻んで切り刻んで切り刻んでも、明日が来ればただの疵もの。だけどそこに安堵があるのも事実で、だからこそ僕はこのエンドレスループから抜け出せずにいるらしい。くわえた煙草がそんな姿勢をポーズたらしめる。
ただのポーズも、実際唯一の逃げ道である訳で、それならば本物になっちゃえば楽なんじゃねーの? という悪魔の囁きは極上の甘美に塗れている。一方天使はとりつくしまもねえよ、と言いたげな顔をしてキセルを吹かす。それは僕のポーズとは異なる、本物の貫禄を有していた。
悪魔は僕に囁き、天使はキセルを吹かす。
さあ、どっちが悪でどっちが正義だか、僕には見当もつかない。むしろ、どちらともが悪である可能性、大。
そもそもこの二匹の人外を飼っている僕自身が正義と無縁の人間である事実を前提とするなら、もちろん悪魔も天使も悪である。現に天使の羽は烏の如く漆黒だ。ここは漆黒の闇。一欠けらの白もない。僕自身が飲み込んだから、ここには音も光もない。つまりはブラックホール。
ならば己さえも吸い込んでしまえば一件落着、めでたしめでたし。
のはずが、あろうことか僕のブラックホールは既に僕の勇気までも吸い込んでしまっている。もしくは元来備わっていなかったのかもしれない。憂鬱とネガティブと堕落が目眩くわが愛しのブラックスペース。せめて無謀だけでも残しておいてくれればよかったのに。
これじゃホワイトルームにすら、逝けやしない。
091016