長い夢の終わり
明日からはこの傾いた世で生きる
そっちの道は平坦かな
こっちの道は険しいよ
だけどコスモスは笑いかける
道を選んだわたしたちに
きらきらと舞い落ちる
光の粒が好きだった
あの朝露のような陽射し
空を泳ぐ雲を操って
追いかけっこをしたね
あの雲がわたし
あっちはあなた
よーいどん、でまた負けた
春は道草 寝転んで
溶けるように抱き合った
夏は木陰 囁きあって
蝉の音に隠れてキスをした
秋は夕暮れ 手を繋ぎ
真っ赤な空の下で交わった
もう冬が来るから
冷たい雪はあなたを隠して
銀世界でさ迷うでしょう
見つからない腕に絶望したら
きっと すぐ 春に逢える
だから怖くないよ
寒くないよ
泣きたくないよ 今は
微笑むあなたから身を離し
絡まった指をゆっくり解く
見上げれば
秋晴れの空に澱んだ雲
さあ 別れの季節だよ
涙を見せないで、ちぎって
哀しまないで、笑って
振り向かないで、走って
わたしの手が
あなたを 掴む 前に
ここに居て 隣に居て
そう云いたかったのはわたし
絡めよう 指と指を
キスをして 強く深く
昨日までと同じように
また明日も歩きたいの
笑って手を振るあなたから
逃げるように走り去ったけど
本当は引き止めてほしかった
この腕を掴んで 抱きしめて
『いかないで』が欲しかった
あなたは気づかないまま
真っすぐな道を歩き出した
ねえ見て こんな険しい冷たい道なんて
独りじゃとても歩けないから
春の 夏の 秋の
思い出に寄り添って
ここで眠ろうか
090929