電灯消したままの夜
まっくら暗い狭い部屋
壁の向こうからは
誰かの静かな泣き声
闇夜はゆっくり閉じ込める
二度と這い出せもしないように
この暗い狭い部屋に
いらない物は溢れているのに
欲しいものだけ見つからない
わたしのお気に入りの
赤いローファーも
紫のマフラーも
緑のワンピースも
あなたも
何処かに逝ってしまった
クローゼット
ベッドの下
バスルーム
部屋中
何処にも見つからない
カーテン越しに朝が来て
探し疲れて眠る床の上
逃れられない悪夢から
待ち受ける悪夢に飛び込むように
私は眠りについて
また
暗い狭い部屋で目覚める
あなたはやっぱり
何処にもいない
木目の床に寝転んで
沈黙する虚無に身を任せた
この部屋には
いらないものばかり溢れていて
余計な感情ばかり溢れ出て
苦い涙ばかり溢れ流れて
狭い空間を圧迫している
壁の向こうから聞こえる
誰かの泣き声は
何時の間にか私の泣き声に
あなたはまだ見つからない
出口さえ見つからないから
私はまだここで
寝転んで待つの
あなたの帰りと
宇宙に召される日を
090919