空に向かって思いっきり
写真をばら撒いた
青だけの青に思い出を
投げ捨てたつもりが
あっさり返ってきてしまう
ひらひら墜ちる懐かしさ
もう今は知らぬ人よ
天に拾ってもらえずに
虚しく地にはりつく紙きれが
まだ愛しいと涙を誘う
冬の帰り道
夏の川辺
汚された記憶の中で
今も鮮明なんだよ
消せないまま泣いて
戻せなくて悔いて
それでも前を見ろと
だれかが云う
この洞窟を抜けたら
エデンだよ、と囁くけれど
ここは暗くて
居心地がいいの
他の誰もいないから
えげつなくても構わないから
だけど夢から覚めれば
写真に残された微笑みが
残酷なくらい優しくて
失ってしまいましたね、
と真理を吐くのに
思い出に染まった地面を
まだ踏めないでいる
歩き出せないよ
遠くて 怖いよ
真っ暗だよ
なにもないよ
090916