雲一つない昼下がりの午後…破壊後の荒れ果てた東京を歩き続ける三人が居た。


いわずとしれたヒーロー、ロウ、カオスの三人である。


三人共物言わぬ思い詰めた表情をし、ひたすら歩き続けていたがその黙々とした歩行の流れを止めるがごとくヒーローが立ちどまった。

ため息をつき2人の友を交互に見つめる。

「まさか…、金剛神世界から帰ってきてこんな事になるなんてあっちじゃ思いもよらなかったね。」

と、言葉を濁しながら言うヒーローの気遣いを一切無視したロウが続ける。




「ええ、まさか餓死の危機に直面するとは思いませんでした。お腹、すきましたね。」
無理に貼り付けた笑顔で言うロウにヒーローとカオスはがっくりと頭を下げた。

「言うなってんだ、忘れようとしてたのによ。」

「あ〜ロウ君はよく笑っていられるね、凄いなー。」

と笑っていうヒーローだがやはり現実のこの状況を聞かせられると改めて参ってしまうのかその笑顔にはいつものはりがない。
空腹の身には悪魔召還プログラムがインストールされた機械も重く感じられるのか、ヒーローは黙ってそこらかしらに転がっている、瓦礫に腰をかける。

それを見たカオスは空を見上げて顔をしかめる。

「だから、止まるなって言っただろうが。 この状態じゃ一度止まったらもう動けねえって…。」

「しかし、無理に先を急ぐのも…この状態では悪魔に会ってもフルボッコされますよ。」

「ロウ君、可笑しくなってきてるよ…フルボッコって。」

いつもと違うロウにヒーローも流石に冷や汗をかかざるおえない。
十中八九、可笑しくなって一番危ないのはロウみたいな性格の人だからだ。


「それよりも、食料だよ。
こんな事ならこっちに来る前にあっちで分けてもらうべきだったよ。」

「ええ、まさかお金自体が変わっていると分かっていれば…そうしてきたんですが。」

戻ってきた東京は既に三十年もの月日が流れ事が事だったので荒れ果てるのは勿論の事、お金も円から魔価へと変わるという(空腹ロウいわく余計な事しやがって)変動が起こっていた。しかしお金がどうこうよりも人が住む集落地すら見つからないため、もうお金以前の問題になってきている。


「どーすんだ!!
このままじゃ、死因・餓死☆でおっ死じまうぞ!」

「悪魔にもやられず… それはちょっと… 真・女神転生史上初のゲームオーバーの仕方ですよ!」

「…ロウ君…あのさ。 現実とゲームがごっちゃになってるよ。」

もはや空腹に侵略されつつある三人に手段もへったくりもなく頭もいかれかけているのでとりあえず、食料会議を始める。

「どうする?
店は、お金は愚か集落さえ見つからないから論外だとして。」
「フン、もう…手段は一つしかねーだろ…。」

「な…まさか。」



「悪魔を喰う!!」

「ええええっ!?」

「なっ、なにをいうんです!?」
カオスのとっぴょしもない提案にヒーローはのけぞり、ロウは立ち上がる。

「あなたは自分が生きる為に他の命を奪うというのですか!?
そんな事までして生きたいんですか!? 」「色々言いたいがとりあえず、生きたわっ!! 」

「あなた、悪魔を食べるなんてそんな悪魔みたいな事をして頭も心も悪魔になるつもりですか!? 大体、目的も悪魔みたいな野蛮な悪魔的思想で顔も悪魔のごとく、悪魔…。」

「…おめぇ、自分で言っていて分からなくなっているだろ。」

そう言い合う2人だが声の大きさといい、片や立ち上がることは勿論の事、顔すら合わせようとしないこの状況では全く迫力がなく、これではまるで老人のケンカのようだ。

この悲惨な状況と流れに一人残されまいとヒーローが無理に会話に混ざりこむ。

「でもさ、確かに悪魔を食べるのはね。 食べるとしても肉食獣…獣じゃないと。」

言うべきとこはそうではないのだがもう、誰もそこまで気づくための脳に送る栄養は残っていなかった。

三人が無言で今まで出会った肉食獣系の悪魔を記憶から絞り出していた。

そんな三人の背後で瓦礫と瓦礫が擦れ合う音がした。
同時に仲良く振り返るとそこには明らかに離れていこうとする、魔獣ケロベロスの姿が。

冷や汗をかくような態度で振り返るケロベロスと目があった瞬間、三人の中で何かがはじけた。


「…だめだ、そんな仲魔を食べるなんて…パスカルだぞ!
でも、なんか美味しそうな肉にしか見えない…。」

「ヒーロー君!
大丈夫ですよ、ケロベロスも無駄死にじゃないです、僕達を生かす為の尊い犠牲です! 」

「おめぇ…さっきと言ってる事が違うんじゃ…」

「この世は素晴らしい食物連鎖で成り上がっています!!
生きる為には仕方がない事、自然の摂理ですよ!!
第一、私達だってもう魚とか野菜とか生きてるモノ食べてるじゃないですか!!
何を今更!」

「フリーダムだなおめぇ。
…そこまですがすがしく言われるとは…いや、つーか、今はどうでもいい!!
腹へった!!」

「ケロベロス、君の事は忘れないよ!」

「尊い犠牲です! 今までありがとうございました!!」

「いいからさっさと喰わせろ!! 話はそれからだ!」

と三者三様の別れの言葉を述べると三人はジリジリとケロベロスに近づいていく。

誠に可哀想なのはケロベロス。何故か喰われる事が大前提となっているからたまったもんじゃない。

スキを見計らって全力で逃げ出す肉食獣。

「ギャウンーっ!!」


「「「あっ、ちょっおま!!」」」




昼下がりの午後、荒れ果てた東京の道を一匹の獣と三人の人間が追いかけっこをしているという、この状況では珍しい光景が見られたという。


因みに最終的にはケロベロスを追いかけていたらオザワが支配する集落へとたどり着いたとか。




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