拍手夢11



『過去の人と現在の人』






「…だれ?」


逆光で顔がよく見えなくてシルエットだけで思わず『綱吉君』と言ってしまったが、改めてよく見てみると双子なんじゃないのかと思ってしまうほど彼は綱吉君とそっくりだった。
だけど、目の前にいる彼の方が綱吉君より幾分か背が高くて、日本ではあまり見ない鮮やかな金色の髪がとても印象的だった。

私があまりにもじっと見ていたら、目の前の彼が少し首を傾げて薄く微笑んだ。その仕草にドキッとしつつも私は平常を装おうとしたが、ふいに何かが頬に触れた感覚にハッとした。視線を彼から外せば、いつのまにか彼の左手が私の頬に触れていた。


「やっと逢えたな、葵」


「――…え…?」


再び視線を戻せば薄く笑ったままの彼。
突然のことに頭がついていけなくて、声が、言葉が出てこない。


――いま、私の名前を言った…?

なんで…?どうして、彼が知ってるの…?――


疑問と恐怖が脳内を支配しているのに、心の隅でどこか懐かしいと思っている自分がいた。


「(なつかしい…?)」

―――それは、どうして…?


ひとり思考に浸っていると、不意に聞こえてきた声にハッとした。

「…葵?どうした?」

二度も名前を言われては、もう人違いなどではないことがわかる。

「ッ…どうして、私の名前を知ってるの…?」


――貴方は、一体誰なの?


そんな思いを胸に彼に問いかけた私だったが、返答はなくて、握られた私の手は今も彼の手から離れないままだった。




+ + + + + + + + +






「くそっ!!リボーンの奴っ!!」

なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!知ってたら、先に帰ったりしなかったのに…!

今更後悔した所で何も変わらないのは目に見えているのに、速く速くと目的の場所へと走った。



――初代ボンゴレがこっちに来てる



そう聞いたのは数時間前。言い換えれば、帰宅直後だった。詳しい事はわからないらしい。ただ、何らかの強い想いが初代のリングに反応したのではないかと、リボーンは言っていた。

――…強い想い

それが誰の事をさしているのか全くわからなかったが、不意にある人物が頭に浮かび上がってきた。

真相を確かめるべく持っていたカバンを部屋に放り投げ、急いで部屋から出ようとした直前に聞こえてきたリボーンの声。


《「…ツナ。最近葵の回りで何か起きてなかったか?」》



リボーンが言っていたあの一言で確信した。
今葵の身の回りで何が起こっているんだ、と。
その原因が、初代ボンゴレと何の関係があるのかは全くわからないままだったけれど、俺は急いで葵の居る学校へと向かった。



   ◇



あたりは夕焼け色に染まり、多くの人が帰宅をしていた。ツナはそれを横目に流しながら学校への道を急いだ。向かう途中で、ひとつ気になる事を思い出した。

それは、先日何気なく散歩に出掛けたあの日…―――



「つ、綱吉君!」

「いてて…って、葵ちゃん!?なんでここに…」

「それはこっちの台詞だよ。
私は今家に帰ってる途中だったんだけど、その、ちょっと急いでて…」

「…?」




俺とぶつかった拍子に見た彼女は、何かに怯えているような表情だった。更には、俺とぶつかる前まで誰かに追われているかのような行動もしていた。だけど、それは違ったようであの時は特に気にはしなかった。
だが、リボーンの話しによればその辺りの日から反応が大きくなっているとの事。だとすると何らかの影響で葵の近くでプリーモが現れた可能性が高いという事になる。

「(ッ…あの人は一体何を考えてるんだよ!!葵は、ボンゴレとなんの関係もないはずだろ!?なのに、京子ちゃんやハルだけでなく、葵にまでこっち(マフィア)の世界に関わらすつもりなのかよ!?)」


ギリッと歯を食いしばり、その考えを打ち消すかのように首を振った。

そんなの駄目だ!葵をこっちの世界に巻き込んじゃ…!!
彼女の悲しむ表情なんて、俺は望んでない…!!




「…ッ、葵ーっ!!!!」







(どうか、彼女を連れて行かないで!!)




to be Next…?


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