彼が居ない間、檻と称されるこの部屋は、心に穴が開いた様に静寂に包まれ不気味にも思えた。 鼻をつく吐き気を催す様な精液と血が交じりあった様な臭い、屋根裏独特の埃掛かった狭く小さい室内で、クリストフにどれだけ犯されたのだろうと思う。 屋根裏部屋に閉じ込められて随分時が経ってしまった。今が朝なのか夜なのか今が何時なのさえ何も分からない。 何も、見えない。 「――――――」 そっと自分の双房に手を添え、彼に犯されるだけの使い物になってしまった肉孔に、指を二本突っ込んでみると、埋め込まれた男性器の型をした玩具が埋まっている。今は未だスイッチは入れられていない。玩具も自分の胎内の中で暴れ回っていた所為かお休みの様だ。 かといってこの気紛れな玩具は何時動きだすか判らない。何故ならスイッチの持ち主はクリストフだからだ。彼は僕を思う存分に弄び、嘲笑する。 与えられる快感に疲れ切った己の身体は怠さを訴え、何かが上にのしかかる様に重い感覚はとても困難なものだ。胃の調子もごろごろと音が鳴るほど悪くなりつつある。それでも、耐えるしか手段など無かった。 彼に開発されたこの身体は、どんなに怠さを訴えても、目覚めてしまった以上再びその気を起こしてしまう。不意に疼く胎内の奥は新たに快感を求めようとしていた。 ――自分の無意識なのだろうか。それとも否か。 今までクリストフにされた行動を想像しただけで、身体は素直に熱を帯びはじめた。心臓は高鳴り、血液の巡りが早くなったのか顔に熱が集中しだし、頬が熱くなるのが判る。其れに彼は何時戻ってくるか判らないこのスリルのある瞬間。また、お仕置きされるのではないかという恐怖とは裏腹の期待感は、一体どうした事なのか。 「……っぁ……」 身体を駆けるの熱をどうにかしようと、無意識に己自身に手を伸ばす。触れられただけでびくつくソレは卑猥に白濁を纏い、それでも構わず上下に扱いてみれば甘い感覚が胎内を刺激した。それが癖になり、忙しく動く手を止める事が出来ない。 「あ……ッ、アッ、あぁ……!」 脳裏に思い出すのは必ず愛しかったあの優しい賢者。クリストフと正体を現し、今もこうして屋根裏に僕を監禁する彼は、自分が愛した賢者に戻る事はないのだろうか。そう――思いながら、自身の先端を親指でしつこく強めに擦り続ければ次第に快感も強くなっていく。 獣の様に発情し、迫る快感に呻き愛しい名を叫ぶ姿は傍からみればとても惨めに思えるだろう。しかしどうする事も出来ず、ただ自慰して虚しさを紛らわすには手段だと選べないものだ。 「サヴァ…ッン、んぅ! サヴァン……! あ、アッぁあ……ッ、駄目、イく、イッちゃぅ……うあぁッ!」 我慢出来ず待ち侘びた絶頂を迎え、淫らに声を上げ悶えながら新たに精液を床にぶちまけ白く汚した。 それでも、まだ、足りないなど。 「はあっ、はッぁ……っはぁ……サ、ヴァン……サヴァンの……せーえきぃ……」 床にぶちまけられた自分の精液さえもサヴァンのものだとさえ思えてくる様になり、心が切なくなる。彼が持つあの裏筋を血管が走らせてそそり勃つ猛き自身、独特なクセのある匂いなども全てが愛おしく感じる。胎内の奥を激しく掻き回す程に自分を突き上げながら犯して欲しい。そうして、胎内に沢山の汚い精液を注ぎ込まれれば後はもう何もいらない。とにかく早く、この僕を貴方の精液に塗れさせて、激しくぶち犯してくれれば―――― 息を荒げながらも、無意識に上唇を舌で舐めずりし、喉を鳴らす。そんな事を考えれば内壁が縮小し、気が付くと胎内の玩具を意味もなく締め付けている。何度クリストフに犯されても、サヴァンの事を考えるだけで更に妄想を膨らまして、快感を欲すようになった。 「――ア……ッ」 此処で、玩具が振動を始めて自分の胎内を再び刺激してくれたら、と。 何でも良い。サヴァンでも、クリストフでもどちらでも良い。早く、早く僕をぶち犯してくれたら。 「……ッ」 我慢出来なくて、壊れる。 「――ご主人、様ァ……! 犯してっ、早く帰ってきて、僕を犯して! ご主人様ッ、犯して……っ僕を犯して下さいィッ!」 未だクリストフが帰ってくる気配の無い扉の方へ、発情期の獣同然に求めるがままに背を仰け反らせ必至に叫ぶ。理性を無くし、自分が自分で無くなるなど知りもせずに腰を思わず揺らしてみれば、突然玩具が振動を開始しだした。 機械的な震音が耳に届き、それさえ鼓膜を刺激する。そして玩具は次第に激しく震えだし、奥を突き上げようと律動を始めた。抉る様に玩具の雁首が意地悪く前立腺ばかり擦り上げ、強い快感な波を押し寄せられ、己の声も甲高くなる。 「アッ!? あァアッ、あ! やんっ、あっ、激しィッ! ごしゅっ、ひんさまぁっ……ああぁッ!!」 どうしようもない快感の波に飲み込まれ、身体はガクガクと悲鳴し先程達したばかりだというのに。そして脳裏が衝撃で真っ白になり、太股の筋肉を堅くし再び口頭から白濁を吐き出した。 快楽の余韻に、視界がぼやけはじめ瞳が虚ろになっていくのが判る。何も出来なくなり、力が抜けてしまうと玩具が未だに振動しているのを感じながらも、気に留める事もなく白濁に染まる床に横たわる。 ――やっと、ご主人様が帰ってきたのだ。 「ふ……ふふッ……ご主人、様……ふふふ……っ」 静かに笑みを溢し、床に飛び散っていた白濁が頬を濡らすのなど構わず、クリストフを呼ぶ。 そして、扉が勝手に開き始め仄かな光が部屋に差し込む丁度、クリストフが足を運びだす。 「――ただいま、イヴェール。良い仔にして待っていたかね?」 →Next |