カオ
 無邪気な表情して、彼は残酷に笑う。


「僕の所においで、メルヒェン」

 優しい声で、それこそ是も否もない笑顔で喋りかけてくる。

「僕の腰に跨って……そう、もっと腰をくっ付けて。ああ、ほら近くに来ないと駄目だろ?」

 そう云われても。所々に痣や流血した傷で汚れた身体であると云うのに、痛みに耐えている自分なんて気にせず、命じられた行動に従ってしまうのが不愉快だった。
 彼の腰に自分の腰を密着させるとは何て卑俗な。だが彼が命じたが故に、揺さ振られる感覚の様な、がくがくと震える身体は逆らう事も許されず、軽く遠慮がちに仕方なく彼の太ももの上に跨る。だが彼は気に入らない様子で、一度眉を潜めては私の身体を引き寄せた。
 醜い。醜い。醜イ、憎、イ。
 触れられる指先は暖かく、確かに光を持っていたが単なる見た目に過ぎない。どうせ中身も全て汚れ腐っているのなら、私と同じになれば良い。と云っても私の愚問にしか過ぎないけれど。
 彼――いやメルツは酷く傲慢的だ。昔のメルツと今のメルツは全く面影が無く、あの可愛らしさは何処の闇へと葬りだされたのか、全く姿を見せなくなった。
 そんなの理由は簡単さ。

 ――メルツがメルツで無くなったのは“イド”が食べてしまったから。

 ――私がメルツの犬になってしまったのは“イド”が望んだから。

 そんな傲慢的なご主人様は、薄汚い雌犬と愛人の様に戯れる。深く、深く身体を求め、そのまま快楽の楽園に堕ちるまでに。
 愛し合う事が断罪ならば、ご主人様の犬になるのは断罪ではないだろう?
 だが私は彼が気に食わなかった。
 私と違う姿。しかし何処か似ている罪悪感。光? 闇? 瓜二つで違う存在が居る事自体、どんなに愛し合う事だけでも憎悪(イド)が必ずやってくる。

 ――不愉快だ。
 実に不愉快だ。
 私が光に傷つけられる側なんて。
 光に跪く無力な雌犬なんて。

 だがそんな事を愚痴てしまえば、間違いなく傲慢的なご主人様はお仕置きを下すんだろう。

「ふふ、分かってないなぁ、メルヒェンは。君って何時も欲情しちゃってるんだから。こんな勃たせちゃって、溜まってるんでしょ?」
「……っは……い……その、通りです、メル、ツ様……っは、ぁ……ん」
「僕の此処で激しく胎内(ナカ)を突かれたいなら、馬鹿に媚びた雌犬みたいに腰振ってよ」
「…………は、い」
「ああ、それなら後ろのお口をぐちゃぐちゃにしないとね? じゃあまずご奉仕をして――君は雌犬なメルヒェンなんだから」

 強気な口調で命じられた言葉に、大人しく頷き四つんばいになる。メルツは、まるで本当に雌犬の様な体勢になった私を見て、嘲笑うような笑みを浮かべた。視界の端に映るメルツの表情は、いかにも悪意を含めた皮肉な表情。足の爪先で私自身を刺激してくる。わざとらしく軽く突くように器用に先端を弄られるだけでも、憎いどころか感じてしまう。胎内から沸き上がる何かが気持ち良くて。
 びくん、と身体が震えた。

「ぅ……く、ふぁっ……メ、ルっ……メルツぅ……」
「メルツ様、でしょ? ……へぇ、こんなトコ弄られて気持ち良いんだぁ……ほんっとにメルヒェンは雌犬だね。または雌豚と同等なのかも!」
「っあ……! もっ、と、もっと罵ってッ……! 私を、弄くりまわして、下さっ……い……」

 気持ち悪かった。酷く気持ち悪かった。
 いっそのこと永遠の闇に従った方がマシに思える筈なのに。彼の鎖に繋がれた以上、逃げ出せない事もままならないからか、傲慢なご主人様に従う事しか、私には――

「舐めて、メルヒェン」

 ご主人様に軽く頷いた私は、そそり勃った彼自身を口に銜えた。



 鎖に繋がれた雌犬

(彼の鎖に繋がれたら以上、雌犬には愛の無いお仕置きだけ)



end.


再びぐだぐだ(遠い目)

取り敢えずメルヒェンにご主人様と云わせたかっただけ。

お粗末様でした。






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あきゅろす。