彼だけが、自分にとってとりがいだった。全ての時間を寂しさと暖かさで埋めてくれたのが彼だけだった。だが、そんな彼を欲した貪欲な快楽を覚えてしまったこの身体は、彼の蘇る言葉だけでも生きていける様になった。 現在、彼は買物に出掛けている。自分は彼の部屋で寛いでいるばかりか、仕事もオフな為に暇すぎて死にそうだ。こんな時にも、彼が言い残した言葉が蘇るだけで、この貪欲な身体は素直に反応をしめす。やってはいけないと解っていても、彼が欲しい一心で身体が動いてしまうから。 「ひっ……ん、ぁっ……じま……あっ、ひぅ……あぁァっ……」 彼でなきゃ、足りない。どんなに自分自身を慰めたとしても、あの感触を覚えている身体は、彼でなきゃ足りなさ過ぎてイったとしても、心だけ満たされなかった。深く彼を味わう程の愛が欲しくて、そうして彼が居ない間も彼を求めて僕は遂に、快楽の闇へと堕ちてしまった。 「――っ、うぁ……あっ、ああっ! じ、じまが良いっ、や、駄目ッ、い、イっちゃ……!!」 絶頂を迎えても、彼が居ないだけで熱は冷めてしまった。 「っは……じ、ま……んぐっ――!」 僕は、彼が居ないと生きていけないらしい。 * 「Revoちゃん。顔色悪いけど大丈夫?」 「あ……ああ、有難う……じまんぐ」 持ちかけてたペンが、一向に進む気配がしない。 じまんぐの仕事用のデスクを借りて、次の地平線の作詞をしていた僕。最近スランプな所為か、全く以てペンを走らせる気がしない。思いついたとしても、つまらないネタや意味の解らない言葉しか思い付かなくて、書いては消して、書いては消しての繰り返しばかり歌詞を考えていた。 それがあまりにも悩み過ぎて、しかめっ面していた僕に、じまんぐはデスクに乗り掛かってきては、顔を覗いこんできた。普通はウザいの一言だけでじまんぐを退かせようとする僕だったけれど、今はそんな気にはなれなくて。思えば気が付いた事は、じまんぐに対して今まで我が儘を云い過ぎた事だけしかなかったのかも知れない。 かといって気付く訳でも無く、そのままスルーしてしまうんだけど。 「Re-voちゃんっ、悩み過ぎると頭ハゲますぞー」 「お前が云う立場じゃないだろ。いやそう云うじまんぐは、その髪かつらじゃないのか?」 「ええぇ……!? いやいやいや、俺の髪は自毛だよ自毛!」 「ははっ。何を本気にしてるの、じまんぐ」 急に変な事を指摘してくるじまんぐには、ただ冗談を云っただけなのに、じまんぐは逆に本気まじりに首をふった。かつらをかぶっているじまんぐなんて、居たら怖いの他に何も見付かる筈は無いが、居たらもうじまんぐじゃなくなる気がする。それはそれで嫌だけど。丁度近くには、じまんぐが使っているであろうベッドがあった。真っ白なシーツにして綺麗にセットされていたから、疲れている時にはあれに飛び込んだら、結構気持ちいいかな、とか思ったりして。 「とおっ」 「あーRevoちゃん。シーツ乱れるでしょっ」 やっぱり飛び込んでみました。なんて云ったりすると、じまんぐは怒る様子も無く、普通に笑って「仕方ないね」なんて云った。 思えば、じまんぐってあまり怒った所を見ない気がする。僕がじまんぐの歌詞カード破ってしまったり、約束の時間に遅れたりしても、じまんぐはいつも笑って終わらせていた。けれど一度だけ、じまんぐが凄く怒っていた事を覚えている。何故だったかは忘れた。けど、その時は凄く怖くて、無理矢理、後ろを慣らされたりした事があって、それ以来じまんぐが怒ったのを見たことが無い。 いや、寧ろ僕が気を遣っているのかも知れない。 「何だ、もうこんな時間だったんだね」 ふと、じまんぐの言葉につられて、時計に眼を向ける。短い針は既に夜の八時を回っていて、まだ夕食も食べていなかった。かといって此処から数歩を歩いた所のレストランで夜食をとっても太るだけだ。でもこの前じまんぐに「もっと食べなさい」と軽く怒られたのは何故だったんだろう。 「腹減った……じまんぐ」 「ん、何々? もしかして俺の手料理食べたいの? 新婚だn「どうでも良いから行ってこいよ」 じまんぐの言葉、掻き消されべからず。 「……Revoちゃん、貴方って子は――」 簡素なこの部屋が、とても寂しく思えた。 じまんぐが買い物に出掛けて何分経ったのだろうか。腹が空いた所為か動く気がする訳でもなく、ベッドに身を投げ捨てて、じっとじまんぐの枕を見つめていた。 じまんぐの部屋。じまんぐのベッド。じまんぐの枕。それから――思えば毎日と云う訳にはいかないが、何時も僕の周りは“じまんぐのもの”ばかりと云う事に気付く。前までは思わなかった事だが、身体を交わす関係となってから何時もじまんぐの事だけを考えていた。女々しい事だと誰が嘲笑うのかは解らないが、僕は恋人を想う事だけはおかしいとは思わない。 でも、考えすぎて周りを見なくなり自分の世界に入り浸かってしまうのは何度でもあった。 「……は……っ、じまんぐ……」 深く深呼吸して恋人の名前を呼ぶ。直ぐに寂しさと云う自分の弱さが、心の底から顔を出すようにしてじわじわと現れてくる。だが手をだしたら止まらなくなるのは、やはり気弱さから出るもの。僕は無意識の内に、自分の手をズボンへと差し入れた。 ――そして、今に至る。 「はっ……ぅ、ぅあっ……あ、じ、じまんぐぅ……っ」 くちゅくちゅと、自らが与える快楽を求め、先走りが溢れてくる自身を慰める様に、ズボン越しの表面を確かめるままに下から扱きあげていく。溜まっている筈なのに射精する様子が無いのを、不快に思いながら、直ぐ其処までキている感覚を愉しんでいた。 浅く、荒い呼吸を繰り返し、それに合わせて自身を扱く速さを強めていく。 彼が欲しい。脳内に浮かぶじまんぐの表情が、ヤってる時の様に余裕が無い様で、余計に興奮してしまう。何度も何度も自分の名前を呼ぶじまんぐが愛おしくで仕方が無い。こんな貪欲になってしまったのは、僕自身の所為なのか、それともじまんぐが僕を惹かれさせた所為なのか。 どのみち彼を想うだけだった。 ふと思い出したのが、枕の下に仕込ませておいた男性器の形をした所謂、スイッチ系の玩具。成るべく小さな自身の秘部に入る様に、玩具の先端に舌を押し付ける。器用に片手で自分自身を弄りながら、玩具に唾液を絡めさせれば、四つんばいになってズボンと下着を脱ぎ、小さな秘部に玩具の先端を押しつけた。 「あ……あぁっ、じ、じまぁっ……は、入って、くるぅ……!」 濡らしたのを良い事に、秘部が慣れて居なくとも、すんなりと其処は玩具を受け入れた。秘部に玩具を挿入させる事に集中していたからか、不意に指先が玩具のスイッチを強にさせてしまった。避けがたい強烈な快感が背筋を駈け上がる。 「ひっ、あ゙、あ゙ああぁぁ――ッ!! や、やだっ、あ、あぁっ!」 胎内を掻き混ぜる様に暴れる玩具は、勢いが強い所為か前立腺を突き上げてくる。耐え難い快楽に苛まれながら、腰が抜けてしまった所為か力が入らす、ベッドに伏せてしまった。だが、それでも玩具をじまんぐの代わりにさせようと、自ら震える手を伸ばし、玩具の鉄となっている下部の部分を必至に動かした。 自身から溢れる透明な先走りと、自らの口端から垂れる溜めきれなくなった唾液、そして頬を伝う涙と熱くなった自分の頬。全て、これがじまんぐだけのモノにされたら、僕は凄く嬉しくなる。 だが、こんな淫らな姿。随分とじまんぐを求め、敏感になった躯は深く深く堕ちてしまった。 「じまんぐっ、じまんぐ……!! ふあっ、あああっ! ひもちぃ、よぉっ、じまんぐぅ……!」 何度も何度も、呼んでも呼びきれない愛しい恋人。あの体温の暖かさも、全てが僕のモノに出来たら良かったのに。その願いは、神様に届いたのだろうか――? だが、ついに夢は覚めてしまった。 「うわぁお。Revoちゃんってば俺の名前呼んで自慰するくらい淫乱だったんだね」 ――背後から聞こえる声。紛れもない彼の声。 「…………!!」 気付く時には遅すぎた現実――部屋の扉にもたれかかった其処に、彼はいた。 「買い物に行っていたけど、帰って来ればこんなえっちな事していたとはね」 「じ、じまっ……!? んあ、ぁっ、何時からっ、其処に――!」 「ん? はは……Revoちゃんが自慰してた所、かな」 にまにまと、反応を面白がる様に浮かべられた笑み。じまんぐを想い続けていたとはいえ、こんな恥ずかしい行為――ああ、自分は何をしていたんだろう。 バレてしまったからか、近付いてくるじまんぐは、遠慮無く玩具をそのまま引き抜いた。 「っんあぁぁッ! や……一気に抜いちゃっ、んくっ」 「大丈夫。でもこれで満足でしょ、Revoちゃん」 「はっ……じま、はっぁ、じまんぐ……」 「分かってるよ」 望むが儘に可愛いがってあげる。そう云ったじまんぐを目にしたのは、それから直ぐの事だった。 ああ、じまんぐが側にいるんだ。 僕の求めていたじまんぐ。買い物に行っていただけであるのに、こんなにもじまんぐが愛しすぎるなんて、僕はどれだけ彼に依存していたんだろうね。 「ふ、ふふ……じま、んぐ……」 自然と零れた笑みさえ、じまんぐのモノ。 「――Revoちゃんも、随分と可愛い子になった事。」 そうやって、じまんぐは嬉しそうに笑顔を見せた。 end. 1400のキリ番を踏んで下さった嘉藍様へのキリリク。 ※嘉藍様のみお持ち帰り可。 . |