「Revoちゃん」

 その名前を呼ばれる度に、伸ばした自分の腕は奈落へと堕ちてしまった。

「れーぼーちゃん」
「……じま、五月蠅い」
「RevoちゃんRevoちゃん。俺の膝枕は君のお家じゃないよ」
「……やだ」

 心の中で、離れていく彼を何度も何度も呼び止めた記憶があった。愛しいものを奪い続ける現実を見ている中で、僕は離れたくない一心で彼を掴もうと手を伸ばした。なのに、彼は何故僕から遠ざかっていくのか、解らなかった。
 どんなに手を伸ばしても、彼は微笑んだまま消えていく。

“じま、じま、じまんぐっ……”

 緋色の花で辺りを無惨に散らした記憶が、彼を遠ざけていくのか。

「……ねぇ、じま」

“やだ、離れないでっ……じま”

 彼と離れる事自体が当たり前だと、誰かが僕を罵るのだろうか。

「ほらRevoちゃん。明日ライブの練習するんでしょ。風邪引いたらじまんぐ許しませんぞー」

“……何処に行くのっ、じま……離れないって、云ったのに……!”

 解っていて、奴は僕と彼を離れさせてしまうんだね。

「――じまんぐ」
「ん? 起きる気になったの、Revoちゃん」
「……違う。そんな事じゃなくて」
「じゃあ何?」
「じまんぐは、僕から離れないよね」

 どれほど寂しい想いをさせて、じまんぐに会えないと嘆いていた時期が続いていたか。じまんぐの確かな膝の上に頭を乗せて寝転がるのも、これで最後かも知れないと思えば気が狂いそうだ。
 でも、今は確かにじまんぐは此処にいる。
 すぐ側に。たった五pの距離の差で、確かにじまんぐは此処にいる。

「じまんぐが離れたら、僕、自殺するからね」


 離れたら、じまんぐも殺して僕も死ぬんだから。

「れ……Revoちゃ――――」




end.







あきゅろす。