絶頂に達する寸前で鈴口を塞き止められ、イヴェールは逆流する様な感覚に思わず涙する。その感覚を避けようと強請ってみても、到底無駄におち、それどころか、何か が更に一本伸びてきては脚に絡み付いて、上へ上へと上がってくる。お尻を撫ぜるソレに気付いた直後、考えもしない動きを直にイヴェールは察した。 考えるまでも無い。這いずる何か が、秘部に触れて胎内へと挿入しようとしていたからだ。 今は秘部口を触れるだけで何もならないものの、何時に挿入って来るか解らない恐怖感にイヴェールの身が強張る。おまけに鈴口を塞き止められた自身を扱かれている所為か、そんなもう一人のイヴェールの言葉など、囚われの身のイヴェールに耳に入る所では無く。自身を扱かれる度に、急に詰まりそうなくらい息が上がるイヴェール。自分でも火照った顔が解るくらい、頬が熱く感じたのはあれから直ぐの話だ。 「や……あっ、ぁ……ァっ……!? 嫌だ、サヴァン……助けて!!」 「彼の名前を呼んでも無駄だって……解るでしょう」 「そっ、そんな……はっ……冗談じゃ……っ! ――嫌だ……んぅ、挿入って来るっな……は、ぁッ!」 「ふふ、イヴェールには泣き顔が似合うものね? そのままヤられちゃいなよ、気持ちいいくせに」 「嫌だッ……! さ、サヴァ……サヴァン、助けて! サヴァンっ……!!」 ――姿無き恋人の名前を悲痛に泣き叫ぶイヴェール。だがそれは、寧ろこの 何か を喜ばせるだけに思えた誘惑の一つにしか過ぎなかった。それにもう一人のイヴェールの、楽しそうな嬉々とした言葉――もう、このイヴェールは本当のイヴェールでは無い様に見えた。すると何を思ったのか、もう一人のイヴェールは親指と中指を擦って指を鳴らした。 それは、本当のイヴェールへ与えられる快楽の誘惑の合図の他に無い。不意に、巻き付いたままだった 何か が突然動き出し、それはある一点へ定められた。 「ぁ……あ……!? やだッ……ぃっ、いやだぁあ!! ひ、ん゙っ、あ゙あぁあ――ッ!!」 驚きを隠せずにいるイヴェールが恐怖に叫んだ瞬間、何か は一気にイヴェールの胎内へと挿入(はい)り進んでいった。何か はお構い無しに太いのを二つも、謂わば奥のしこりとなる部分を突き上げていく。許しがたい違和感と痛みにイヴェールの背中が大きく仰け反り、休む暇なくそのまま 何か は前立腺ばかり狙ってくる。 誰もが必ず弱い部分である前立腺を、姿も形も見えぬ 何か に突かれるからか、イヴェールの口から漏れる喘ぎは、とても苦しそうだった。 腰に来る痛みが尋常では無いくらいに。 「あ、ァあ゙ッ! ひぐゥっ……! お、奥……ッうぁ! 止め、止めて……!!」 「その触手達はね、イヴェールと遊んで楽しいんだって……嬉しいでしょう?」 「あ、はぁっ……ンぅッ……ひッ! 止め……あっ、らめぇ……ッ!!」 奥を突かれる度、自身に高まる避けられない絶頂。イヴェールは自身に次々と迫る快楽の絶頂にあられも無く、鈴口を塞がれたまま太股を軽く痙攣させてイってしまった。 塞がれた鈴口からは、出せぬままに空イキをしたおかげで、触手が塞いでいる隙間から透明な精液があふれ出る。イヴェールは絶頂を迎えた後の射精感にびくびくと身体が震え、ショックからか何も云えなかった。しかし、もう一人のイヴェールは、それだけではまだ足りない。 「ふふ……イヴェール、こっち見てごらん」 今に囚われの身のイヴェールは、まるで高熱に犯されているくらいに頬が赤く、口からはだらしなく溢れた涎が、涙と混じって顎を伝い傍から見れば瞳が凄く虚ろで、それは光が無いに等しい。未だ胎内を突かれ続け、息継ぎだけでも大変だと云うのにもう一人のイヴェールは、ただただ快楽に喘ぐイヴェールの反応を面白がっているだけだった。 「はッ……ひンっ、ぁあッ、な……に…………ッ!?」 ふとイヴェールが視線を向けた途端、虚ろだった瞳は、絶望したように思い切り見開かれた。 「……君が望んでいるサヴァンだよ。見られたかったんだよね、サヴァンに見られて悦ぶんだよね?」 「い、や……! 嫌だ、嫌っ嫌だッ、違うのサヴァンっ……見ないで!」 「嘘吐き。本当は気持ちいいくせにさ!」 「見ちゃ駄目っ……駄目なのぉッ……! サヴァンッ、見ちゃ駄目えぇッ!!」 「ふふ……残念だね、サヴァンに云っても無駄だよ……心が無いからね」 現れたのは、紛れもなくイヴェールが今は会いたくなかった恋人のサヴァンだった。もう一人のイヴェールが呼び出した幻覚なのだろうが、それどころでは無いイヴェールは絶望感に溢れ、せめてサヴァンに見られないように叫ぶ。 しかし、サヴァンは何故か無表情だった。あの茶色の瞳は光を無くしており、ただ黙したまま――泣き叫ぶイヴェールを見据えているだけ。微塵たりとも動かず、違和感ある姿だった。そうして居る間にも、触手は物足りないとばかりにイヴェールをどんどん突き上げていく。サヴァンに見られている、と云う羞恥に身体が敏感となったのか、イヴェールは喘ぎ続けた。 気が狂いそうな迄にサヴァンへと叫ぶイヴェール。何も知らないからか、サヴァンの姿は単なる幻覚とも知らず―― 「ほら、彼の前なんだからもっと喘ぎなよ。勿体ないな」 「やッ、う、駄目ッ! んぁ、サヴァっ……み、見ちゃ駄目だよおぉ!! あ゙ッ……あぁっ、あ――ッ!」 「見やすいように足広げたら? ……気持ち良いよ?」 「嫌っ……広げちゃ、っら……らめぇッ……!!」 そう提案し、もう一人のイヴェールはイヴェールの足を広げようと力を込める。面白いくらいにイヴェールの身体が反応し、触手はまるで何処か喜んでいる様にイヴェールの秘部へ二本から三本へ次から次へと増えていった。 元々から快楽に弱い所為か、イヴェールの意識は飛びそうな程に限界だった。前立腺を突かれる毎に痙攣してしまう身体、次々に自身から溢れる精液、涙で虚ろな視界に呂律の回らない舌と云う姿は、只の快楽に溺れて壊れたマリオネットにしか思えない。 「ふふっ……ふふふ、良いねぇもう一人の僕……凄く可愛いよ。サヴァンだって、ずっと見ていたい様だけど?」 「ら、らめぇ……! そんなっ、たく、ひゃん突いたらっ……くぅッ……僕の、僕のお尻が……こ、壊れっ、壊れひゃうよぉッ……!!」 ずちゅずちゅと卑俗な水音が辺りに響く頃には、イヴェールの秘部に太いのが三本、バラバラに抜き挿しを繰り返していた。イヴェールはされるがままに 何か に嬲られ、手足も動かせない所為で身体が悲鳴を上げて時節跳ねるようにもなってしまって。 ぼろぼろと涙を流す様さえ、もう快楽に溺れたおかげでイヴェールはすっかり淫乱状態だった。 幾度無く再びやって来た自身の射精感に、イヴェールの虚ろだった瞳が見開き、何か もそれを察したのか今度は鈴口を解放し、早く出せと急かすように自身を扱きだす。自身の先は弄られすぎたのか熱が溜まって赤くなっていた。 「あっ、ンあッ……らめぇ……! ィくっ、き、気持ひいっ、も……イく、あッ! サヴァンが、見てるのにっ……イ、イくっ、イっちゃ、うよぉ!!」 「うっ……わ、ちょっとイヴェール、思ったより淫乱すぎじゃない?」 「ら、らって……ひぁ! あ、あンッ、お、お尻っ、気持ち良いのぉ……もっと……ぐちゅぐちゅにしてぇ……!!」 もう一人のイヴェールのわざとらしい引いた様な言葉なんか気にせず、淫乱状態のイヴェールは気が付けば自分から 何か に胎内の奥を突かれるように、腰を動かしている。 あまりのイヴェールの卑俗さにもう一人のイヴェールは、内心嘲笑いつつ、隣に居る心の無いサヴァンの身体に抱き付いて見せびらかした。それは、淫乱状態でのイヴェールは何を選ぶか、の選択権に思ったのだ。それに気が付いたイヴェールは、そんなもう一人の自分に気が変わったように叫んだ。 「ふふ……君が触手達ばっかり相手にしてるから、サヴァンも呆れたみたい……僕がサヴァンを貰っちゃおうかなー?」 「……や、やだぁ!! サヴァンは……ッ、サヴァンは僕のなのぉ! 僕のっ、僕のサヴァンをとっちゃ、とっちゃ、駄目ぇッ!!」 それ程サヴァンが好きだった想いが露にされたのは、イヴェールにとって何よりも大切な恋人だからか。もう一人のイヴェールは、予想通りの言葉ににんまりと笑みを浮かべれば、再び指を鳴らしてイヴェールを解放した。 「ッ……あ、は、うぅ……や、ンっ、駄目ぇ……物足り、ないよぉ……!」 するすると、イヴェールの秘部から抜かれていく 何か。イヴェールはそんな行動さえも感じるのか、小さく息を詰まらせながらも微かに声を漏らしている。 やがて全ての 何かの触手がイヴェールから去った頃に、もう一人のイヴェールが身体を支えた。 「……どう、イヴェール?」 「はあ……っ、はあ、はあっ……ふぁ……サヴァ、ンは……僕、のぉ……ッ」 「君は、快楽を楽しんでるうちに、本音を云う事が出来たかい?」 →NEXT |