土曜日のお話。
 2009.07.26 Sun 21:40



私は猛烈に後悔をしていた。


明後日が試験開始となった今日、手元に見えるはまだ大量にある手付かずの試験範囲の山。

今までサボったツケが回ってきたのか、その量は半端ない。

追試になるわけにもいかず、本来ならコツコツ頑張らなくてはならないはずだった。


……しかし、私が後悔しているのはそのことではない。


夕方5時。よく集中できる時間帯とされているこの時間、私はバイト先にいた。

いつも以上に少ない客。

私はひたすらパンの整理と洗い物をしていた。

心の中はただ一つ。



(何故今日に限ってバイトを入れた…っ!)



今頃周りはしっかり試験勉強をしているに違いない。

自分のあまりの阿呆さに溜め息が絶えなかった。


さらに、今悩んでいるのがもう一つ…。


洗い物をしながらチラリとレジを見る。

そこには今日初めて会った可愛らしいバイトの女の子。

活発そうな小麦色の肌とは対照的に、態度や行動はひどく控え目で大人しい。

どうやら彼女は6月に入ったばかりの新人さんだったようだ。

だがレジは特に失敗することもなく、まだわからないことは多いようだが、それでも私がフォローできる範囲だ。

お客さんにフランスパンを適当に切ってくれやら本来から切るべきではないようなパンを「だいたい1cmぐらいに…」なんて曖昧なことを言われても、4月からいればそんなの慣れっこだった。

何より彼女は私が全く出来ないソフトクリーム作りがとても上手い。

店長への電話や時間ごとの点検などの事務作業は私がやった。


しかし、ただ一つ、私がまだやったことのないものがあった。


「ねぇ〇〇さん…。(バイトの子)」

「はい。」

「締め…やったことある?」

「いえ、まだないです。」

「……だよねー。」


そう、確か一週間前にもこんなことがなかっただろうか…。


私は締めのやり方を知らなかった。



(…やばいやばいやばい。今日早く帰れない!)


帰れるどころが無事終えられるかどうなも甚だ疑問だ。夜7時。普段ならピークの1つや2つあるはずのこの時間帯にもひたすら穏やかな客足。


閉店まであと2時間。

私はこの上なく不安だった。

そんな不安が押し寄せる中、本日三度目となるお客さんの無茶ぶりに応えつつレジから店内を見渡す。

すると目に入ったのは一人の眼鏡をかけた美少年。

何となく眺めていると、彼は母親と来ているらしくあーだこーだと話し合っている。

そこにさらに一人の少年が加わった。



(ふ…双子…だとっ!?)



何と美少年は双子のようだった。

しかも片方は制服眼鏡の秀才タイプ、もう片方は動きやすそうなラフな格好に眼鏡のスポーツタイプ。

美少年+眼鏡でも萌えなのにさらにタイプの違う双子というオプション付き。

萌えポイントでも追求してんのかこいつら。

おそらく高1あたりだろう華奢な身体つきの美少年ズに萌えを供給してもらい、その後来た無駄に愛嬌を振り撒く子供に悶えつつ、


ついにやってきました閉店時間。


閉めようとした矢先に入ってきた何人がようやく帰り(最後のにーちゃんは割引が何時からかなんて聞いてきた。んなもん時と場合と客足によるんじゃ。)、とりあえず店を閉める。


………さぁ、どうしようか。


8時の点検の際電話した店長には「あらそー、まだやったことなかったのぉ。じゃあ誰かに聞いて〜。あ、〇〇お姉ちゃんとか詳しいから!」

と何とも適当なことを言われた。


(電話…電話……。)


とりあえずシフト表の入ったファイルを開く。

その裏表紙にはそれぞれの携帯番号がしっかり書かれていた。


(嫌だなぁー。〇〇さん最近会ってないしなぁ。)


基本的に電話が嫌いな私はしばらく電話番号を眺めながら悩む。

しかしいつまでもそうしてはいられない。背に腹は変えられん…と受話器を取った。


が、そこでふと気づいた。


(〇〇さんの名前って…何だっけ。)


先程店長の言葉で気づいた人もいるだろう。

彼女は〇〇゙お姉ちゃん゙と言った。


……そう、〇〇さんは何と姉妹で同じバイト先だったのだ。


(派手な方が妹で…清楚系なのがお姉ちゃん…。)


そこまでは知ってる。

あまりの似てなささに初めはたまたま名字が同じ人なだけだと思っていた。

だが私もここで働き始めたのは4月頃。

さらにあまり入らないため会った回数はまだ両手に余るほどだ。


(………え、どっち。)


並ぶ名前に必死に記憶を手繰り寄せるも、全く出てこない。

唯一周りを下の名前で呼ぶ先輩も、彼女のことはお姉ちゃんと呼んでた気がする。…どっちだよお姉ちゃん。

悩みに悩み、遂に私は上に名前がある方の番号を押した。


そして……







「はい、もしもし〜。」




…………妹、だった。

運がなさすぎる。


泣く泣く妹に訳を話、彼女からお姉ちゃんに話してくれるという。


「お姉ちゃん行けると思うからさー、ちょっと待っててー?」

「は?いえ、あの電話でいいんですけど…。」

「お姉ちゃんだから大丈夫大丈夫!」


どんな根拠だ、それ。



結局、お姉ちゃんに来てもらい、私は1から締めのやり方を教わった。

店長からごめんね〜なんて気のない言葉をもらい、まだ片付けに慣れてない新人さんのお手伝いをし、いつもより大幅に時間のかかった締めが終わった。







―――…
ひたすらバイトの出来事語るだけで大分長くなりましたねー。
つーかいい加減勉強しなきゃ。





コメント

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