『白く濁らない〜』の続編。


















オンとオフ。そんな言葉を自分のような人間が使うのだと最近知った、と言ったら同級生の男に馬鹿にされた。そしてそんなオンの日が立て続いて数週間が経ち、勿論屋上から青空を仰ぐのも久々だったが、憎まれ口を叩いてくる同級生が隣にいるのも久々だった。


フェンスの鍍金が剥げた部分からの金属特有の匂いが鼻につく。それに顔を顰めていたら隣から不意に声が上がった。




「うっわー可愛くねー顔。」

「うっせーヨ。」

「仮にもモデルのくせに気の抜いた顔してらァ。」

「だって今はオフだもん。」



覚えた単語は使わなきゃ意味がない、ということで早速実用してみる。ちらりと横を向けば、こちらを見つめていたらしいサドとばちりと目が合った。


日本人にしては珍しい瞳の色が彼の上に広がる色と余りにも対照的で奇妙な感じがする。赤と青、そして彼の蜂蜜色の髪を黄色と見立てれば街中にあふれている信号機じゃないかと一人感動してしまった。


「…お前今失礼なこと考えてただろ。」

「別に。なーにもアル。」

「嘘付け。」

「そういうお前こそ私のこと見つめてたアル。見惚れてたアルか。そのうち料金頂くネ。」

「ばっか。お前の顔如きにいちいち金なんて払ってられるかィ。こっちは、ただでさえ金欠なんでさァ。」

「ビンボー学生は厳しいアルな。不景気まっしぐらネ。」

「モデル様は能天気でいい身分だな。」

「うん。バブル再来アル。」



この際、次学年への進級も危ぶまれている目の前の少女が経済用語をさらりと使用したという驚くべき事実は一先ず置いておくことにする。

不景気ということは世界中の人間の財布の紐がキツくなり世界全体の消費活動が停滞するということのはずだから、この少女だけが良い思いをするということは有り得ないはずなのだ。怪訝そうな顔をしている自分に気がついたのか、チャイナは澄んだ藍色の瞳をぐるりと回してから得意そうに言う。



「私って童顔ダロ?」


愛くるしい円い瞳、長くてしっかりと上に向けられている睫毛、まひるの太陽に照らされる白い頬と橙色の髪、この三点セットに揺らがない男はいないだろう(自分もその一人)と内心思う。


「まァな。ついでに言わせて頂くと他の部分も「余計なことは言わなくていいアル。」


「それでネ、事務所の社長がネ、『君は童顔だから同世代以外からの人気も人一倍すごいんだ。世の中ロリコンだらけだから。君のためなら彼等は惜しみ無く金を使ってくれる。なるべく成長しないで巨乳なら尚更良いんだけどね。』って。これからは私の時代アル。きゃっほう。」





つまりは、フェンスに背を向けながら得意そうに微笑みを浮かべる横の女に何度も欲情した俺には『ロリコン』という称号が与えられるらしい。いくらなんでもそれはないだろう。片思い歴5年の純情男、とでも言っておこうか。







「頼むからグラビアとかに転身すんなよ。」

「何か言ったアルか。」

「別に。」




















モデル神楽とは中学から悪友の沖田。

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