「薔薇は完全に開いちゃったら終わりなのよね。」


何枚もの花弁が華やかさを演出している見事な大輪の薔薇を、鋏でそっと切りながら呟いた彼女の横顔は何処か寂しそうだった。細くて白い指に緑色の小さな棘がいくつか食い込んでいて、痛々しい印象を受けるが彼女は何も感じていないようである。



「そうなの?こんなに綺麗に咲いたのに勿体無いな。」



冬の日差しは暖かい、むしろ暑さを感じさせるくらいである。縁側に寝そべりながら、床の冷たい感触に夢中だった銀時は上の空で答えた。


頬杖をつく手がそろそろ痺れてくる頃だった。次の体勢をどうしようか、と考えていたら頬に別の冷たさを感じた。首を僅かに回すと、白い花びらが部分的に見える。すっと鼻を掠める香に瞼を閉じれば、すぐ隣から笑い声が聞こえた。



「銀さんもそんな風流な表情をするのね。意外だわ。」

「お前俺を何だと思ってんの。」

「馬鹿な男と思ってます。」

「傷つくんですけど。」



銀時が薔薇の茎に手をやって持とうとすれば、妙の指先とぶつかった。そんなことで顔を赤らめたり、恥らったりする関係はとうに通り過ぎた。


指に棘が引っ掛けさせ鼻先に近づければ、めしべの花粉を吸い込んでしまいそうになる。一輪の薔薇と数センチだけ距離を保たせて銀時は呟いた。


「花占いとかしてみる?」

「いいですけど。何を占うんですか。」


風の気配を全く感じない空間の中で暫くの沈黙を続けたが、結局何も思いつくことが出来なかったらしい銀時を見て妙は軽く溜息を吐いて言った。


「将来、私が玉の輿にのれるかどうかなんてどうですか。」

「それは占うまでもないだろ。」

「どうして。」

「だって俺が金持ちになれるわけないじゃんよー。」


その言葉を聞いて漸く満足そうな笑みを浮かべた妙は、銀時から薔薇を静かに取り返すと一枚一枚花弁を千切り始めた。















幕末銀妙。

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