※微裏
相手の上顎部分に自分の赤い舌を侵入させれば、慣れない感触に彼女は案の定、微かに震えた。彼女の細い、白い肩が頼りなさそうに震える様子を見るのが快感でもある。
他人に普段触れられないような場所を敢えて選んで触れていく。相手が拒もうと身をよじろうが、自分の胸板を強く押し返そうが知ったことではない。
「…もうやめろヨ。」
「嫌。」
太陽に弱い体質の持ち主のくせに、お天道様が地上に顔を出している間は馬鹿強い力で自分を制する女。決闘なんて最初から話にならない程の歴然とした力の差を見せつけられる。そんな彼女が力を失う瞬間、それは自分がこういう風に触れる時だった。
線の細い彼女の身体中を嘗め、撫で回し、傷付ける一歩手前の愛撫を繰り返してやれば、自分に逆らう術と力を面白いくらいに失くしてしまう彼女を見るのが堪らなかった。
「私を殺す気アルか、オマエ。」
「昼時にいつも俺を殺そうとしてるのは何処の誰でしたっけ。」
「昼は昼、夜は夜ダロ。」
「だったら夜は俺に殺されてもいいんじゃないですかィ。」
「屁理屈言う男は嫌われるアル。」
シーツと肌が擦れる音がやけに耳元ではっきり聞こえるのは、自分が行為に集中していないのか、それともしたくないせいなのか神楽には分からなかった。別世界に飛ばされるような感覚はあまり好きじゃない。
戻れなくなりそうで怖そうだというのも理由の一つだったけれど、それ以上に、まるで「女」のような甘美な声で喘いでしまう自分に対して嫌悪感を抱かざる得ないからだった。
「いい加減素直になれば。」
「意味が分からないアル。」
惚けたふりをして無意味な時間稼ぎをしようとする自分に虚しさを感じつつも、せめて行為の最中に互いが抱く感情の共通点を神楽は探りたかった。彼女の耳朶を一舐めした沖田は、穴を塞ぐように低く擦れた声で呟いた。
「抱かれすぎで死ぬってどうですかィ。」
「ごめん被るネ。」
ああ、分かった。
この感情の正体が。
薄い発狂
一応幕末沖神。