微々裏…?














「斑の無いように丁寧に」そんなフレーズを口の中で転がしながら作業を進めていくうちに、一種の快感のようなものが女を襲った。それは液体が発する特有の匂いが災いしていた。女の恍惚とした表情を作り出すのが自分ではないと悟った男の抱いた感情は想像に容易い。互いに仕事漬けの毎日を送っていて、こうして女を掻き抱くことができたのも数ヶ月ぶりのことだったため尚更だ。




「あっ。」




突然視界に齎された暗闇に、手から離れていくボトル。指と指は糊付けされ、おまけに己の唇まで糊付けされている、ということに気が付いた女は抵抗しようとするも肌をなぞる冷たい男の指先に翻弄された。つんとした匂いの代わりに日向の匂い。流動性のない液体の変わりに男の汗。



「せっかく上手く塗れてたのにオマエのせいで台無しネ。」

「そりゃあ悪いことしちまった。」




反省の色など全く見せる様子もない男は女の身体の線をひたすら辿るように触る。一方の手は女の視界を奪ったままだった。互いの舌の裏側まで舐め合い、さらに男が歯列を舐めようとしたところで女の歯が男の舌に食い込んだ。



「何するんでさァ。」

「ベタベタしてて気持ち悪いアル。どうにかしろヨ。」

「どうせ今からベタベタになることするから関係ねェだろィ。」

「さっさと行って来いヨ。」




女の鋭い睨みに折れた男は結局部屋を出て行かざる得なかった。扉の閉まる音を聞き、レースのカーテンも閉められていない窓から差し込む月光を眩しいと感じた女はゆっくりと瞼を閉じた。


暫くして帰ってくるであろう男の手に下げられている白いビニール袋、その中に入っているプラスチックボトルを確認するまで目は閉じたままでいようと心に決めた。その頃には月の威力も弱まって、星がもう一度主張を始めるだろう。それで明るくないなら、男の望む通り行為を続けてやっても良い気もする。








除光液は星を君に返す









マニキュアを溢した沖田に怒る神楽。一応金魂設定。

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