微裏。














小ぶりだが形は良い二つを優しく愛撫してやれば、聞いている側がくすぐったい気持ちにさせられる声を発する彼女。


そのことに気を良くしていたら頬を思いっきり抓られた。短いけれど鋭い彼女の爪が皮膚に突き刺さって食い込んだ。見上げれば不愉快そうに歪められた顔が出来上がっている。




「男の上目遣いはキモいアル。」




彼女の言葉を素直に聞き入れ、再び視線を目の前の白い肌に戻し愛撫を再開させる。手と舌遣いを巧みに操る自分の行為に彼女はめっぽう弱いことを知っていた。少しずつ乱されていく二つの息が混じり合う。



本当は今にも瞼が落ちてしまいそうな程の眠気に襲われているであろう彼女が必死に耐えてくれているのは自分の賜物なのか、そうでないのかは分からない。


シーツの皴が一本、また一本と増えていくのを目の端で捉えながら、舌の位置を徐々に移動させていく。皮膚の下に隠れた、彼女の細胞までも舐め上げるように。



「そんなに舐めて美味しいアルか。」

「別に。」

「じゃあ何でベロベロするネ。」

「したいから。」

「あっそ。」




まともに問いに答えようとしない沖田にこれ以上尋ねても無駄だと思った神楽は黙ることにした。それにしても自分の肌が他人の唾液によって満遍なく濡らされていくのは、あまりに心地よいことではない。


けれどいくら抵抗してみせても、嫌な顔をしてみせても、沖田には全く通用しないことも分かっていた。むしろ、それが彼を喜ばす要素になるのだ。


だから、こうして時折彼の皮膚を抓る。彼の体内に限界まで近づけるようにして抓ることで、願わくば彼の細胞を傷つけたい。それは、ささやかな神楽の抵抗でもあり、沖田からの一方的な行為への返しでもあった。



「痛ェ。」



沖田がそう呟けば、神楽はそれで満足だった。そのため行為が終わる頃、いつも彼の皮膚には無数の白く陥没した部分が出来上がっているのだ。それは暫くすると赤色に変化する。まるで細胞のように。









きみの細胞全て









一応幕末設定。

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