学生パロ
自意識過剰かもしれない。昨日の晩が味付けの濃い鍋だったせいか、干乾びて水分が蒸発しきった喉を押さえた。
けれども斜め45度、小学校の時に使っていた三角定規程正確な角度という自信は皆無だが、その辺りから突き刺さる視線に気が付かないわけにはいかなかった。
そろりと首を回して視界の範囲を広げれば、案の定、自分が持つことは叶わない淡い色彩があった。ついでに、その周りを取り囲む目障りな色彩も捉えた。
額と髪の生え際にじわりと滲む汗。これ以上、体内から水分を逃してはならない。そう思い、勢い良く立ち上がって昇降口にある自動販売機を目指すことに大股で歩き始める。
『売り切れ』という忌々しい表示のボタンを数個見送った後、低コストであるという理由で決めた商品が下の口から転がり出たので手を伸ばす。
すると缶には既に別の手も伸びていた。細いけれど、骨格はしっかりとしている美しい手だった。神楽は、目当ての缶を拾い上げた別の手から徐々に視線を移し、最終的にはその手の主の顔へと辿り着いた。
「あの…、私のなんですケド。」
予想外の事態に普段は欠かすことの出来ない、自分の代名詞でもある胡散臭い方言を語尾につけることを忘れた。この間にも体内の血液は流動性を失ってきていて、確実に身体が萎んでいくのが分かる。
「ああ…コレ?」
「そう、返して欲しいネ。」
他人の物を強奪しておいて、飄々とした顔で自分の手に握られている缶を見つめる男に苛つき始めるのは自然なことだと自分を慰める。
これ以上目の前の男が自分を煩わせるようなことをしたら暴力行使も致し方ない、と判断した矢先だった。水滴を纏った缶が神楽の目の前に突き返された。言葉を失ったままでいると、相手が代わりに沈黙を破った。
「じゃあ、そういうことで。」
そう言うなり、先程自分達がいた教室の方向へ向かい始めた男の後姿を見つめたまま神楽は唖然としていた。
無事に生還した円柱に視線を落とすと、水滴を糊代わりに貼り付けられた白い紙があった。滲み、激しく歪んだ黒い数字達が刻まれている。
「そういうことかヨ。」
そして彼女は彼の意図を漸く悟った。
微熱視線
学生パロで神楽とモテ男だけど頑張った沖田。