パロ+微々裏









大した意味はなかった、なんていう陳腐な言い訳をする気もとうの昔に失せていた。ただ経緯を説明するとすれば、数ヶ月前に、暇を持て余していた自分が今時珍しい電話ボックスの中に貼り付けられていた店の広告をひきちぎって、一番下に記載されていた電話番号に掛けてみたということ。


そして一時間も経たない内に女の子がやってきたということ。よく見かける茶髪でも巻髪というスタイルでもない橙色の二つの団子を耳の上辺りに乗っけた、蒼い目の持ち主だった。




目を瞠るような白さの肌に青や赤の血管が浮き出るのではないか、と思う程。しかし実際に彼女の肌に赤い色彩を散らせていくのは紛れもなく自分だった。ちょうど十数個目の赤を鎖骨の下に塗りこんでいたら、伏せられていた長い睫毛が動いた。




「そんなに付けたら後が大変ネ。」

「一日もすれば消えまさァ。」

「一日掛かるなら尚更アル。この後の客が文句言うネ。」



自分の頭の上から発せられる不機嫌そうな鈴の声を無視し、着色の作業を中断させることなく続けていく。

肌に軽く噛み付かれるという行為に痛みは感じないらしい彼女は、いつも後のことを気にしていた。先日も草臥れたシーツの上で「そんなこと分かっている」と言ったら「お前は真のSだナ。」と褒められた。満更でもない顔をしていたら深くて長い溜息を吐かれた。



「もうそろそろ時間アル。」


赤い斑点が付けられた首筋を伸ばし、ベットの横に置かれたデジタル時計の緑色を凝視した女は呟いた。


たった数時間の逢瀬だけれど、確実に夜を埋めてくれるのは有り難いことである。口元をあげて感謝の一言を述べたら、「何が」とつき返された。そして彼女は冷たいフローリングの線の上に跨りながら散らばる下着を拾い始めた。そんな女の腰の括れを見つめていたら、厭らしい視線に気が付いたのか白いクッションを二つ程投げつけられた。




暫くして部屋に入った時と同じ格好に戻り、「またいつでも呼んでネ。」と営業スマイルを微塵も浮かべることなく言い放つ彼女を見つめ、男は返事をする代わりにひらひらと手を振った。



人肌恋しい夜を埋めてくれる存在なら喜んで迎え入れる自分にとって、時間を奪うように現れる彼女は堪らない。明日の晩は別の女と過ごすとして、明後日はまた彼女に奪ってもらおう。それだからボロ紙と化した店の広告は、いつまでたっても自分の財布に居座り続けてるのだ。







夜を奪う乙女達






コールガール神楽と常連客の女たらし沖田。

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リゼ