※3Z未来かなり捏造(強調)
※微裏(強調)
※上・中・下とプチ続き物
※最初シリアスで最後はハッピーエンド















何も纏っていない身体のはずなのに、不思議にも肌寒く感じることがないのは自分に覆いかぶさっている男のせいに違いなかった。下半身に妙な感覚を覚えて、毛布を引き剥がそうとして、そこでとんでもない事実を思い出した。



「オイ。」



凄んで声を掛けてみるも、相手からの応答はない。しかし此処で引き下がるわけにはいかないのだ。一刻も早く、この状況から解放されたかった。



「どけ。さっさと抜けヨ。」



一枚の毛布の下、自分と男が繋がったままという信じ難い状態。否、体勢。行為の最中に意識を飛ばした自分には記憶がなかったが、大方、男の鬼畜精神が働いたりしたのだろう。


細い身体からは想像もつかない固くて広い胸板を力の限り叩けば、数秒もしない内に男は目を覚ました。不機嫌そうだったが、まだ寝ぼけ眼であるところを見ると扱いは容易いはず。



「ねェ、痛いアル。さっさと抜けってば。」


「はいはい、うるせーな。」



面倒くさそうに適当な返事を返しながら、男は音も立てずに己を神楽から抜き去った。ずっと自分の中に納められていたモノが急に取り外された感覚は奇妙だった。空虚感を感じてしまう自分が厭らしいとも思わない。



再び寝転がる男をそのままにし、神楽は一人起き上がった。さんざん動かし、動かされた腰が正常に機能するか些か不安だったがそれは無駄に終わった。床に脱ぎ散らかされた衣服も拾わずに洗面所へと向かう。大きな鏡の中で自分を睨み返してくる女の瞳は敵意剥き出しのようにも感じられる。一体、誰に喧嘩を売っているのか、と笑ってやりたくなった。



素早く温い水を全身に浴びさせ、シャワー室の横に掛けてあったバスローブを着て先程の部屋に戻る。石鹸も使えば良かったと後悔したが今更だった。全ての衣服を回収し、ついでにバッグから化粧ポーチを取り出してダブルベットの前にある化粧台の上に並べた。



「ねェ。」


一向に起き上がろうともしない男に向かって神楽は言った。返事はなかったが、そのまま言葉を続けることにした。朝は大抵の場合低血圧な男に返答など最初から期待していない。




「もうお前とはこれで最後アル。昨日も言ったけど。」


「今まで中々楽しかったヨ。高校の時は、まさかこんなことになるなんて思ってもなかったけどナ。喧嘩しかしてなかったし。」




神楽は男に言いたかったことを伝え終わると、ドライヤーで濡れた髪を乾かし始めた。その音に塗れて、微かに低い声が聞こえたので電源を切って耳を澄ませた。


「なんで。」

「何が。」

「なんで急に最後になったんでさァ。」



毛布を被ったままの男の表情は鏡越しでも見ることはできなかったが、とりあえず声のトーンはいつもと変わりないように思える。一瞬、言葉に詰まった神楽は半乾きの髪を指で撫でた後、口を開いた。



「守らなきゃいけないものができたアル。」

「意味分かんねェ。」

「分からなくていいヨ。お前には一生分からないと思うし。」

「何だソレ。」



化粧を一通り済ませた神楽はベットの前で着替え始めた。丁度ブラジャーをつけ終わってから、これを外す沖田の手の感触を感じることも昨日が最後だったんだ、なんて心にもないことを言いそうになった。全ての服を着終わって、ベットの端に腰掛けるとサイドテーブルに転がっていた沖田の携帯を取り出して言った。


「お前なら相手してくれる女が一杯いるから心配はいらないアルな。」


メモリーに溢れ返る女の名前にざっと目を通していると、何時の間にか男がすぐ後ろにいて自分を抱きしめていた。相変わらず力が強い。青タンでもできたらどうしてくれようと思うのは昔と変わらない。




「どうしても?」

「どうしても。」




背中に感じる体温と耳の後ろにかかる吐息。この二つだけは忘れないでおこう。学生服を着た高校生の時からの思い出は数え切れない程、腐らせる程、沢山あるはずだが。そう心に決めて、するりと沖田の腕から抜け出した神楽はベットから立ち上がった。別れの言葉なんて思いつかなかったから、いつも通りの言葉を交わす。


「じゃーナ。」

「ん…。」



部屋を出て、ドアノブに掛かるプレートを「起こさないで下さい。」に裏返す。逆のにしてやっても良かったが、そこまで意地悪くはないと自分を信じたいかった。静まり返った廊下を歩き出すのは、ほんの少しだけ悲しく寂しい気もした。



まだ何の変化も見られない、平たい自分の腹を優しく擦りながら、霞んだ視界を断ち切るように大理石のフロアを蹴って歩く。目を擦って、腹を擦る。大事な人が傍にいてくれる、それだけで十分だった。



















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