泣き虫カレシ 続
2013.11.07 Thu 19:48
泣き虫カレシ(過去の日記参照)の続き
追記に哉太視点
報われてほしいなぁ…
「別れて…くれないか…?」
「え…?」
読んでいる本から顔をあげて、アイツが俺を見る
困惑した顔をするアイツ
そんな顔をさせた俺
高校時代からずっとアイツと付き合ってきた
だからこそ、唐突な別れの言葉に驚いているのだろう
「……」
黙ったまま悲しそうな顔をするアイツに、息がつまりそうになる
今すぐ嘘だって言って、笑って、キスの1つくらいアイツに送りたい
でも…、今の俺にはそんなことする権利なんてない
コイツはすげぇいいやつで、すげぇいい彼女だ
だからこそ、俺から離さなきゃいけない
今度の手術、俺は半分の確率で死ぬらしい
死ぬ気なんてないけど、コイツには、死ぬかもしれない病人とじゃなくて、しっかりしたやつと幸せになってほしい
アイツが俺とお揃いの指輪をそっとポケットに入れた
これをやったとき、アイツ泣いたっけなんて、そんな事ばかり思い出す
「うん。まぁ、いいと思う。別れよっか」
明るく言われた言葉に、思わず顔が歪む
勝手なことを言っているのは俺の方なのに
別れなんて切り出さなきゃよかったと後悔しかしない
「私も、…好きな人…とか…いるし…」
「……そっか」
頭の中が真っ白になる
アイツが俺にでもバレるような嘘をついているのが分かる
好きなやつに、愛してるやつにこんなこと言わせるなんて…
好きだ…好きなんだ
誰よりもお前が好きだ…!
愛してんだよ…!
気が狂うほど言葉が溢れそうで、無言で頷く
「…じゃぁ」
「うん…」
表情筋を無理矢理動かす
今、俺が泣いたらアイツは困る
笑うんだ俺
今までの感謝を込めて
「…さよなら」
アイツが去るのを俺は責任を持って見なきゃいけない
「ありがとう…」
呟いた声に幸せになってくれ、と祈りを込めた
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