一仁王くんと柳生さんのキス事情一


「におーくん。ちゅーしたいです」
「…っは?!」
どこか舌っ足らずに言う柳生に言葉を失っていると、そのままソファに押し倒される。
風呂上がりで乾かしていない髪が肌に当たり冷たいが、構っている余裕はない。
一一いつか、いつか柳生に告白しようとチャンスを待つ事早数ヶ月、レギュラー陣には茶化され励まされしつつ、ようやく家族総出で留守の今日、柳生を家に誘った。
一緒に手作りの夕飯を食べ(柳生さんの手作り…!)、雑誌やテレビを見ながら歓談し、先に風呂を勧め(風呂上がりの柳生さんの可愛らしさといったら…っ!!)、にやにやしながら自分も風呂に入り戻ってきたら一一柳生に押し倒された。
なになに何!?
確かに、絶対に今日告白しようと決めていた。あわよくば一一…などと不埒な行為の妄想もしていた。
だけど、この状況はなんぜよ!?
慌てて辺りを見回せば、テーブルに置かれたジュースが目に入った。
グラスに入ったぶどうジュースもとい…赤ワイン。
「これかぁぁあ!やぎゅ、何、姉貴のワイン間違えて飲んだの!?」
仁王の上に被さる柳生に叫ぶように問えば、こてんと、柳生は首を傾げた。
可愛ええ…って違う!
「んん…わかんな、ぃ…。あのね、におうくん、ちゅーしたい」
そう言って、アルコールのせいで頬を赤く上気させる柳生が顔を近づけてくる。
そのままキスしてしまいたい衝動に駆られるが一一
「…っ柳生さんタンマ!」
肩を掴めば、柳生は不満げに眉を寄せた。
「柳生、ちゅーとかは、好きな奴同士がする事なり」
「…におうくんは、わたしのこときらいなのですか…」
「いや違う好きじゃ!好きじゃよ!?」
きみが正気だったなら告白しようと思っていた位なのだから。
肩を落とし震える柳生に、仁王が慌ててその頭を撫でた。
気持ちよさそうに瞳を細め、柳生は笑った。
「じゃあ、ちゅー」
「…いやだから!物事には順番ちゅーもんがあって…っ!ちゅーは恋人同士がする事なんじゃよ!」
「じゃあ、きょうからこいびとになる。…だめ…?」
潤む瞳で見つめられ、思わず、
「っ!…だ、めではないぜよ…」
ごめんなさい雅治は彼の可愛さに負けました。
「…ちゅー」
うれしそうに笑いながら、柳生は唇を重ねてきた。
「ん…」
重ねるだけの行為を何度も繰り返し、満足したのかやがて、ぺろぺろと唇を舐め下唇を甘噛みし始める。
「あー…」
仁王は頭を掻きながら小さく呟いた。
「…柳生が、悪いんじゃよ?」
「…におうくん?なぁに…っんん!」
柳生の後頭部に手を添えて、無防備に開く咥内に舌を差し入れる。歯列をなぞり舌を絡めれば、甘い吐息が洩れた。
「…っふ、んぁ…」
「柳生、可愛い……俺もちゅーしたいち、ええ?」
「今、した…」
「別んとこ。やぎゅ、服脱いで?」
言えば、少しだけ困ったように柳生は眉を下げた。
どうやら可愛らしいちゅーだけがお望みらしく、仁王のキスに困惑気味のようだ一一誘うだけ誘っといて。
ここまで煽られれば仁王も引く気はなく、言葉を重ねる。
「恋人同士、なんじゃろ?裸見せる位、普通ナリ。ほら、俺も脱ぐぜよ」
言葉通りTシャツを脱ぎ捨てれば、柳生もややあって小さく頷いた。
パジャマのボタンを、たどたどしい手つきでゆっくりと外していく。
「…ん、これでいい…?」
「よくできました。…ここ、ちゅーしてええ?」
「ぇ…?ひぁ、ぁ…ゃ、んっ!」
胸の突起に舌を這わせ、吸い上げる。片方は親指でつぶすようにぐりぐりと押すと、柳生の身体が震えた。
「っあ!ゃ、ぁ…んっ!ぁん…っん!」
「気持ちええの…?こっちも、ちゅーしたげるぜよ」
「…っえ…?」
柳生の身体をソファへと押し倒せば、柳生が目を丸くした。
愛撫によって緩く反応し出す性器を軽く扱き、下着から取り出せば、柳生がびくついた。
「ゃ…っ!なに…っ」
「大丈夫、怖い事なんかせんよ?ちゅーしてあげたいだけじゃ…」
安心させるよう優しく囁くと、仁王は柳生の脚の間に顔をうずめた。
勃ち上がる性器を指で撫で、おもむろに口に含む。
「一一…っひぁ!ぁ、ぁぁん…っ!ゃ、ゃあ…っ、ぁぅ、んっ!んぁ…ぁぁ!」
形をなぞるように舐め上げ、先端を舌先で刺激すれば苦い先走りが洩れた。
「ん…、柳生、気持ちええ?」
「ひ、ゃ…ぁあ!しゃべ、なぃで…ぇ…っ!ゃ、ゃだ、も…っ!ぁ…ぁぁあー一…っ!」
一際大きくなった性器が、咥内で果てる。吐き出された精液を全て飲み込むと、口元を拭いながら仁王は顔を上げた。
「やぎゅ?俺のもして一一…」
ソファに沈む柳生から、返事はない。
代わりに、すーすーと規則正しい寝息が仁王の耳に届いた。
「………」
仁王は口元を引きつらせながら頬を掻いた。
小さく呟く。
「トイレ、行ってくるかの…」
勃つ自身を情けない思いで見やりつつ、それでも柳生の身体をタオルで拭きパジャマを着せてやる事を優先する。
一一自身の処理を終え、ベッドに運んだ柳生を抱きしめて一度だけ唇にキスを落とす。
「…今日は予定ちと狂ったけど。ちゃんと告白するから、それまで待っとってな?一一柳生、好いとうよ…」
「…ん」
無意識だろう、柳生から握ってきた手のひらを強く握り返しながら、仁王はゆっくりと瞳を閉じた。




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