綱
「学校でさ、道徳の授業あんのね」
「はあ」
「命について考えるのがテーマだったわけよ。自分の生きる意味は何か、って」
「それはそれは難儀なテーマですね」
「俺、産み落とされたから生きてるって答えた」
「…」
「で、怒られた」
「でしょうね。嘘でも人を愛するためとか格好つけとけば良かったのに」
「そんな恥ずかしい事言えるか!…そんで、もう一回考えてこいってレポート用紙三枚渡されたんだよ。どうすりゃいいの」
「まあ、あなたは要するに意味が無いと思うわけですか?命に?」
「…そこまでは言わないけど…おっきな意味は無いと思うよ。子孫残すためだろ?あとはそれぞれじゃん。総括して“これ”って言えないよ」
「ませてるというか…すれてますね。これが流行りの中2病思考ですか」
「なんでもいいけど、提出明日だからなんか考えて」
「…。…命とはつまり道端の排泄物です。何かを犠牲に産まれ、成り立つものであり、その犠牲とほんの少しの本能から構成されています。その排泄物には繁殖という本能以外に意味はありません。後は土に還るのみです」
「…何いってるかわかんなかった。ねえ、それつまり意味ないって事でしょ?だからそれじゃまた先生に怒られるじゃん。真面目にやれ」
「むしろお前が真面目にやれ」
「その倍お前が真面目にやれ」
「真面目に生きてないからこんなのも書けないんですよ、書くより前に真面目に生きろ」
「お前が真面目に生きろ、前科持ち」
「お前も前科持ちにしてやろうか」
「ちょっ槍しまえって!乗っ取って何する気だ!」
「勿論前科をつくってあげるんですよ。人生経験豊かになりますよ」
「いるかああそんな経験!ああもおおっ進まねえ!」
「頭悪いのに難しい事考えるからダメなんですよ。道徳の課題ならそれっぽく道徳観だしたらいいじゃないですか。ありふれた…、例えば人の役に立つとか」
「えー…、う〜ん。今の友達と一杯思いでつくって、京子ちゃんとけけけ、けっこんする、みたいな。それが俺の生きる意味だ、って感じ?」
「普通ですね。それでいいんじゃないですか。中学生らしく幼稚で」
「なんでバカにしてんの?俺、超頑張って考えたのに」
「超頑張って考えた結果がこれ…、くふっ」
「…このくそ果実。…じゃあお前は?お前の生きる意味は?」
「あなたをぶっころす事です」
「こええよ!!目の前で真面目に言うな!お前が言うと冗談に聞こえないから!」
「わりとマジです」
「!?」
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