馬鹿で愚直なマゾヒスト シロ→次
2012.01.16 Mon 01:33
「もしも、僕が次屋先輩のことを好いていたとしたらどうします?」
勿論、この話がもしも、なんかじゃないことは僕しか知らない。いつの間にか、予防線を張って夢を嘘に見せかけるのが上手くなっていた。
「え、シロ、俺のこと嫌いなの?」
「ああ、いや、恋仲になりたいとか、そういう意味です」
そうか。次屋先輩はほぅ、と息を吐いて、お前に嫌われてるのかと思った、と少し笑った。僕の言葉に先輩は傷ついたのかもしれない。僕もそれ以上に傷ついているけれど。もう何度死んだのか分からないくらいの致命傷。
「そうだな、俺もシロのこと好きだぜ、って言うな」
「でも、先輩は僕と恋仲になりたいわけじゃないんでしょう?」
「だって、好きに種類なんかないだろ」
普段先輩は他人に無表情と無感情ばかりをみせているからか、感情表現はいつだって真っ直ぐすぎるくらいに単純だった。
「俺はシロが好きだから、」
それでいいじゃん。
好きに種類がないのだとしても、欲には種類があるんじゃないだろうか。あなたを、僕のものにしたい欲。それを好き、で覆い隠せば「健全」で「正常」で「間違っていない」敬愛になるのだから、やっぱりそれは僕を傷つけるんだと思う。修飾から中身を取り出すみたいに。
「そうですね」
わざと僕は傷ついてみる。わざと僕は自分がおかしいのだと叫んでみる。それでも、夢を嘘だと思い込むことが出来なかった。
「次屋先輩」
「ん?」
「僕、次屋先輩のことが好きです」
「うん、俺もシロのこと好きだぞー」
わしゃわしゃと頭を撫でられ、そうして僕はまた、自分の心とやらが傷ついたのを見やった。
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