幸せと仕合わせ バクマン。 エイ平
2011.12.12 Mon 22:51
「平丸先生にとって幸せってなんです?」
幼く愚直な子供はこてん、と首を傾ける。細身の身体。部屋に閉じこもっているせいか白い肌。僕と同じような彼が持つ、爛々と輝いている瞳だけが僕と大きく違っているところだった。そしてそれが、僕と彼を分ける最も確実で無慈悲な境界線。
「僕はマンガが書けて亜城木先生と戦えて平丸先生を愛して平丸先生に愛されて平丸先生とセックスできたらそれが幸せですケド」
僕は間を保つために紫煙を彼の顔に吹きかけようかと思ったが止めた。さすがに僕もそこまで落ちぶれてはいない。
幸せ。単語としては至極単純明快なそれを詳しく説明できる人間なんてこの世には存在しないだろう。
「お金と愛と時間があったら幸せだ」
思ったことを素直に口に出してみると、彼は、そうですか、と一人頷き、そして笑った。
「僕の机の上から二つ目の引き出しに預金通帳が入っています」
それは知っている。前、好奇心から引っ張り出してあまりの桁数に悲鳴を上げかけたから。
「で、平丸先生には僕に会いに来る時間があります」
兼マンガから逃げるための時間な。
「そして、」
勿体ぶったように笑う彼が次に口にすることなど手に取るように分かっている。だから君は幼く愚直だというんだ。
……でも、まぁ。
「愛は、今からいっぱいあげますよ」
そんな彼に流されてしまうことが別段嫌とも思わない辺り僕はどうやら彼と同じような生き物らしい。
則ち、自分が幸せなら自分が愛している人も幸せであるという持論を馬鹿みたいに信じていること。
僕と、僕の向こう側を見つめる瞳がまたギラリと光った。
―――――
週を跨ぐであろう平丸さん祭りに動揺したので。本っ当に吉田氏は平丸さんのことが大好きですよね!
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