今日の泣き虫 次屋と金吾
2011.11.26 Sat 22:35
昨日は自分とあまり背丈が変わらない、ぼやっとしている時友先輩が自分よりずっと遠くまで、それでいて早く走れることが悔しくて泣いた。
一昨日はみんながあれだけ迷惑がって遠ざけていた滝夜叉丸先輩が、ぐだぐだと何か言いながら自分に手を差し伸べてきたことが悔しくて泣いた。
その前は明るくて後輩思いに見える七松先輩が僕を置いてけぼりにするかのようにずんずんと先に走っていってしまうのが悔しくて泣いた。
僕はどれだけ構って欲しがりで、負けず嫌いで泣き虫なのだろう。
今日は、今まで僕を空気のように扱っていた次屋先輩に話しかけられた。
金吾。
飄々としたその人は僕の名を呼び、なんですか、と振り向いた僕の頭に縄を落とした。固まる僕には目もくれず、自分も輪になった縄の中へと入り電車ごっこをするように縄を両手で持ったので思わず僕もそれに倣う。
迷子防止。
次屋先輩は僕を振り返り、へらりと笑った。僕が迷子になるのを前提として話しているようで、少しむっとする。
シロがやらせてくれないんだ。俺ばっかり滝夜叉丸に付き合わされる。
シロ、って誰だろう。もしかして時友先輩のことかな。あ、滝夜叉丸先輩がいないと呼び捨てなんだ。
そんなことを考えていたら急に縄を引かれてつんのめった。ぼふ、と萌葱の中に身体ごと突っ込んでしまう。見上げた顔は、無表情でなく楽しそうで。
俺の、後輩。二人目。
にへ、と。次屋先輩は笑った。その笑顔に何だか胸が苦しくなって少し泣いた。
突然泣き出した僕の頭を焦ったように撫でる次屋先輩を見上げ、もしかしたら次屋先輩が僕を一番寂しい気持ちにさせない先輩なんじゃないだろうか、と涙を拭っていた。
もちろん僕は、その半刻後には、次屋先輩のとんでもない方向感覚を知ってしまい、真っ暗な森の中で寂しさ故に涙ぐむ僕を次屋先輩が何事も心配ないのだ、とでも言うように慰めてくれることを知る由もない。
―――――
多分次屋がこの小話内の金吾を三番目に多く泣かせた人。二番目は小平太。一番は喜三太。
金次の可能性について考えてみたけれどこの二人は百合でいいのかもしれません。
金吾の泣き虫は卒業しても治らないのを希望します。
[*前へ]
[#次へ]
戻る