神童と旅行
 2012.04.29 Sun 18:33
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※『神童と旅行』を書いている途中で、没にしたもの。


※名前変換なしです…。

読む?

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 夕食まで時間があるから、どこかに出かけようか。そう言ったのは私の方だった。先ほどの妙な雰囲気と自分の愚かな考えが招いた、恥ずかしい気分をどうにか紛らわせてしまいたいと考えたのだ。つまり、茶を濁す作戦に出たのである。
もちろん同じことを考えていたらしく、彼も二つ返事で答えてくれた。


「(と、言ったものの。この辺って、何があるんだろう…明日は近くの遊園地に行く予定だし…。)」

「ナマエ?」


 旅館のロビーで置いてあった観光マップを手にしていると、彼が私の顔をのぞき込んできた。拓人は浴衣姿に髪を結っているので、それなりに雰囲気が出ている。少しだけ、ほんの少しだけ彼が大人っぽく感じた。


「あ、この辺って何があるかなーって…」

「あぁ、この辺は…こことかナマエが好きそうだけど、どうかな?」


 旅館専用の送迎バスに乗って、近くの観光地に行くことになった。外を歩くのに外出用の浴衣を借りて行くことにした。わざわざ浴衣を着て行くにはわけがある。これはよく、観光地であることだろう。浴衣を着て行くと、色々な割引されたり、サービスされたり…なにかと得をするらしい。まだ昼過ぎだし、どこかに出かけたいことを旅館の女将さんに言うと、そう案内された。そこで私たちは夕食の時間まで浴衣姿で観光地を歩き回ることにした。


「なんか浴衣とか久しぶり…何色にしようか迷っちゃったんだけど、どうかな…?」


私の浴衣はピンク生地に撫子、赤が濃いめの赤紫色の帯を締めてもらった。彼の方は紺色の浴衣を着ていた。


「うん、似合っている。その…か、可愛いよ!」

「ありがとう、拓人もかっこいいよ!」


 浴衣姿になるのも初めてだし、その上いきなりほめられるのに慣れていないから、思わず恥ずかしくなってしまった。よし、さっさと行こう。
















 浴衣はやっぱり動きづらい気がする。バスを降りてから歩きづらい様子を見ていた彼は私に声をかけてきた。


「大丈夫か?」

「う、うん…」

「辛かったら、言うんだぞ。」

「うん、わかった…」


 バスを降りてすぐに、拓人はそういうと手を繋いでくれた。こういう時だけ、少しだけ大人っぽくしている彼が可愛いと感じた。
 これと言って、欲しいものはない。サッカー部のみんなには、明日行く予定の遊園地でお土産を買うつもりだ。そのため、ここで過ごす時間は全てノープラン。旅館ですでにお風呂は入ったし、とりあえずおやつを食べることにした。


「ナマエ、何がいい?」

「うーん、どうしようかな…拓人は何にする?」

「オレは…アイスクリームが食べたい。」


 恥ずかしそうに彼が言うと、何だか私も妙にアイスクリームが食べたくなってしまった。




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