この醜い世界でも花は咲いている。この花のようにあなたも強く生きて。
 2012.04.02 Mon 22:04

※ミストレ夢































 今回の実践訓練は、調子がよかった。
 それでもやっぱりバダップにはかなわないけど、結構いい感じに訓練ができたと思うよ。だって今日は、何故か体が軽く感じたし、いつもより早く動けた。反応速度もよかったし、本当に調子が良かったんだ。

 訓練を終えて、シャワーを浴びて汗を流してすっきりしていたら、視界にエスカバの姿が入って来た。いつもの彼なら、何人も男子と一緒に歩いているから、シャワーも結構な人数なのに、一緒にいる奴がいない。

 今日は珍しく一人らしい。


「珍しいね。君が一人でいるなんて、」

「ちょっと一人になりたかったからな。」

「へぇー、君がそんなことを言うなんて、本当どうかしたの?」


 乾かした髪をいつもの様にまとめながら、エスカバに背を向けながら問いかけた。エスカバの方は、少しだけ沈黙した後、ゆっくりと話始めた。


「………見合いの話が、オレの所にきてんだよ…」

「君がお見合い?!」

「つっても、婚約者を決めろって親に言われてんだよ…おい、笑うんじゃねぇー!!」


 オレは思わず笑ってしまった。だってあのエスカバが、オレやバダップよりも先に、そんな話をすることになるなんて、考えたこともなかったんだ。まぁでも、彼の家は戦略家としてかなり有名な名家だ。遅かれ早かれ、この話はやってくるとは思っていたけど。でも、それはきっとまだまだ先の話で…それも、バダップの方が絶対に先だと思っていた。だってエスカバだよ?あの女の子が近寄らなさそうな、色恋とか一つもしたことがなさそうな奴が、オレよりも先に結婚(正確には婚約の話だけど、)するだなんて。本当に笑っちゃうよ。


「だってさ、こういうのはオレの周りではバダップが一番先だと思っていたんだ。」

「悪かったな、オレが先で。」

「いや、想像以上の『笑い』をくれただけでオレは満足だよ。それで?一体何を悩んでいるんだい?お見合いくらい、さっさとしてしまえばいいじゃないか。オレたちは未成年だし、せいぜい礼服を着て女の子とお話しながら食事をするくらいなんだから、そんなに気にすることはないよ。」


 所詮お見合いなのだから、必ず婚約をしなければならない、という訳ではないし、そういう決まりもない。オレがそう言うと、今度はエスカバが逆に聞いてきた。


「ところでお前の方はどうなんだ?」

「オレ?オレは、そんな話は全くないね。そもそもオレは、君のように名家の生まれではないからね。婚約なんてするかどうかも分からないね。それに結婚するなんて、まだ早すぎるよ。オレはもっと、色々な女の子と話がしたいよ」

「お前、本当幸せだよなぁ……」

「失敬だね、エスカバ。……まぁ、そのお見合いの日まで、ずっと頭を悩ませていればいいよ。それじゃあ、お先に。」


 制服を整えると、オレは先にシャワールームから出た。

 うん、今日の髪も調子がいい。




2012.03.29

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